ついに基本合意に到達
9試合出場、出場時間690分、1得点……。以上が、セビージャで清武弘嗣が残した数字となった。1日には、彼のセレッソ大阪移籍が決まる。この日本代表MFの古巣は、セビージャと粘り強く交渉を続け、ついには基本合意に至ったのだ。
ここ数日の報道通り、セビージャにはC大阪よりも魅力的な清武の獲得オファーが届いていた。しかしMLSのシアトル・サウンダースらが提示したそういった申し出は、選手本人の母国へ戻るという強い意志の前に粉砕されたのだった。
31日正午、セビージャのオウンドメディア『SFCラディオ』は、新たに契約したアルゼンチン人MFワルテル・モントーヤがEU圏外枠を使うことになり、その代わりに清武がクラブから去ることを認めた。さらには清武の移籍先が日本となることも。その時点でセビージャとC大阪のクラブ間合意は時間の問題となっていた。
昨夏に移籍金650万ユーロ(約8億円)を支払い清武を獲得したセビージャは、その内500万ユーロ(約6億円)を回収する。セビージャは清武の売却額をまず600万ユーロに設定。一方のC大阪は最初に400万ユーロ(約5億円)+インセンティブを提示したものの、それは拒否された。そして31日に行われた再交渉において、間を取った500万ユーロという額で合意。移籍が成立するのは1日の見込みで、両クラブは支払い方法などの詳細を詰めて、サインを交わすことになる。
清武の移籍は同日に両クラブのHPでアナウンスされるが、その前にセビージャの名物スポーツディレクター、モンチが先んじてそれを認める可能性がある。こちらの11時にはモントーヤの入団発表が行われるが、彼はその場で清武の移籍についても言及する考えだ。
ソーシャルネットワーク上では、セビージャファンが次々と清武にエールを送っている。彼らの多くは、実力が不足していたとは考えていない。ただ、条件が悪かったのだと感じている。セビージャ入団が内定した直後に監督がウナイ・エメリからホルヘ・サンパオリに代わったこと、また言語の壁や日本代表に合流するための長旅は、清武にとって大きなハンデになった。ファンはそんな事情を、彼が実力を発揮しづらい状況にあったことを理解している。
清武のスペインでの冒険は終わりを迎えた。しかしこの日本人のフットボールにおける才能は、セビージャファンの瞳にだって、汚れたようには映っていないはずだ。
(取材・文:ロシオ・ゲバラ、協力:江間慎一郎)
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