サイドバックでプレーした宮崎智彦
前半開始早々に先制し、規律のある守備で相手の行く手を阻む。後半は押し込まれる展開となったが、ボールへの執着心を見せる選手たちは最後のところで身体を張り、クリーンシートで試合を終えた。試合内容も1-0という結果も、およそ今シーズンのジュビロ磐田らしくない、手堅い戦いぶりだった。
引き分け以上で自動的にJ1残留が決まる有利な状況ではあったが、勝利を目指すことで手にした降格回避だった。
安定感と流動性。
このふたつの要素を両立するような陣容を、名波浩監督は仙台との最終節で組んできた。最終ラインの一角に入ったのは宮崎智彦。今季のほとんどをボランチでプレーしてきたが、本職は左SBだ。スピード感溢れるオーバーラップがあるわけではない。クロスが持ち味というわけでもない。しかし、背番号13には危機察知能力に裏打ちされた高度な守備力がある。
対面の相手をマークしながら、次にどこへパスが出てくるかの予測が的確で、その際のスライドも迅速。もちろん、中盤の底でもチームに欠かせないが、DFラインでプレーすることで守備能力が純粋に活きた。「久々だったし、楽しかった」と笑顔を浮かべた宮崎。心なしかいつもより声が枯れているようにも感じられた。ピッチの上では指示を出し続ける彼の姿があった。
「できる限りのことはやったかなと。(森下)俊とかアダ(イウトン)、(上田)康太とか(川辺)駿にうるさいくらいに声をかけ続けていた。前半はボールも動いていたし、守備に関しても常にコンパクトで、向こうのやりたいような攻撃もだいぶ防げていたと思う。その辺はうまくできた」
周囲に正しい指示を出せるのは、それだけ状況を把握できているからこそである。味方を動かし、自身も最大限のパフォーマンスを見せる。プロとして当然のことを、宮崎はこの日も当たり前のように遂行したのだ。