齋藤学のドリブルは何が優れているのか
今季の齋藤学は誰にも止められない。それくらいの勢いがある。ブラジルW杯以来、久々に日本代表復帰を果たしたのも納得のパフォーマンスで横浜F・マリノスをけん引している。
リーグ戦2試合を残して自身初のJ1年間10得点に王手をかけている。しかし、最も危険なのは左サイドから仕掛けるドリブルの突破力だろう。中村俊輔が長期離脱中のチーム内で、齋藤の存在感はすでに大黒柱のそれだ。苦しい時は左サイドに展開し、局面の打開を“ハマのメッシ”の足に委ねる、そんな場面は90分の中で何度も見られる。
それでは齋藤のドリブルは具体的に何が優れていているのか。スピード? キレ? テクニック? おそらくこんな単語だけでは表現できないだろうと考え、実際にピッチ上での姿を知る選手たちに尋ねてみた。
「齋藤学選手はいったいなぜ、あれほど輝けるのでしょうか?」
最初に話しを聞いたのは昨年までチームメイトで、今季からガンバ大阪の一員として対戦相手になった藤本淳吾だ。22日の試合では同じサイドでプレーし、齋藤のドリブルを目の当たりにした。そして以前からの変化もよく知っているはずである。
「スピードに乗っている中で、もう一度ギアを上げられるから(マークに)つきづらい。あいつのリズムに持っていかれてしまう」
たしかに齋藤のドリブルは細かいステップを踏みながら、体を左右に揺らして進んでいき、いきなり「グンッ」とスピードの上がる瞬間がある。フェイントに対応しようと足踏みしていたDFからしてみれば、後退しながら急なスピードアップについていくのは難しい。これが藤本のいう「あいつのリズム」に呑まれるということだろう。