モウリーニョが迎える古巣相手の正念場
“ハッピー・ワン“がスタンフォード・ブリッジに帰ってくる。
わずか10ヶ月前には指揮官としてスタンフォード・ブリッジのベンチに座っていた男が、宿敵の監督としてスタジアムに帰ってくる。ジョゼ・モウリーニョ監督は2013年にチェルシー復帰が決定した際に自らを「ハッピー・ワン」と形容し、その後クラブに5シーズンぶりのプレミアリーグ優勝をもたらす。しかし、2015年12月18日に成績不振を理由に“幸せな生活”が幕を閉じた。
モウリーニョ監督がチェルシーの本拠地であるスタンフォード・ブリッジに敵として訪れたのは過去一度しかない。2009/2010シーズンに同氏がインテルを指揮していた時のことだ。同年、インテルはチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝でチェルシーを下し、その後バルセロナとバイエルン・ミュンヘンを撃破して欧州の頂点に立つこととなる。チェルシー対インテルの試合ではサミュエル・エトーのゴールでインテルが敵地で勝利を収めたが、モウリーニョ監督はエトーのゴールシーンで喜びを表さなかったことでチェルシーサポーターへの敬意を表した。
しかしながら、今回のモウリーニョ監督にそのような余裕があるだろうか。現在マンチェスター・ユナイテッドはお世辞にもチームが順調に機能しているとは言い難く、順位表の上でも7位と低迷している。それでも、前節のリバプール戦ではさすがモウリーニョとも言うべき徹底した守備ブロックを敷き、敵地でスコアレスドローをもぎとった。今週末もスタンフォード・ブリッジで同様の戦術を取るだろうと予想されている。
一方、かつての王様を本拠地に迎えるチェルシーもまた、アントニオ・コンテ監督という新たな指揮官のもとチームを作り上げている最中だ。開幕3連勝とスタートダッシュを切ったものの、リバプールとアーセナル相手に敗北。その後はコンテ監督の“象徴”ともいえる3バックを導入し、ハル・シティとレスター・シティ相手に勝利を重ねている。こちらも首位に勝点差3の5位に位置しており、負ければ優勝争いから一歩後退することになる。
獰猛にただ勝利を追い求めるコンテ監督にとって、相手がモウリーニョ監督であることなど意識することは微塵もないだろう。数々の錯綜するドラマには目もくれず、新生ブルーズは赤い悪魔を飲み込むことだけを考えている。