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無意味な“パス成功率”に意味を持たせる“見える化”【サッカーデータ革命最前線―03】

最先端のサッカーにおいてデータ分析はなくてはならないものだ。感覚や印象ではなく客観的事実の積み上げで見えてくるものは多々ある。それにおいて世界でも頭一つ抜け出ているのはドイツ代表だろう。結果を出し続けるために、データ分析はどこまで進んでいるのか。短期集中連載で最前線に迫る。(取材・文:本田千尋【デュッセルドルフ】)

シリーズ:サッカーデータ革命最前線 text by 本田千尋 photo by Prozone , Gettty Images

「パス成功率」「スプリント数」。単体では意味がないデータ

プロゾーン
プロゾーンのアジア部門を担当する浜野裕樹氏【写真提供:プロゾーン】

 そして分析の世界は、次のステップに進みつつある。

 「データの見える化」、である。

 第1回のコラムで触れたように、今ではある試合の翌日に「昨日のパス成功率は何%だった」と伝えるだけでは、選手側に響くアプローチをするのは難しい。決して「パス成功率」という概念が古くなったわけではない。

 ただそういった数字は、UEFA公式HPやブンデスリーガ公式HPなどで誰もが確認できる。その選手がデータに興味がある、なしの問題ではない。“ありふれたデータ”を目の前にそのまま示されても、そこから何をどうしたらいいのか、選手側も困惑するだけだ。

 パス成功率、走行距離、スプリントの本数…といったデータについて、プロゾーンのアジア部門を担当する浜野裕樹氏によれば「導入としては今も大事」なのだという。

「そういったデータに加えて、試合はその時どんな状況で、自分のポジションがどこで、どこに向かって走って、という追加の情報が入ってこないと、スプリント何十本、だけでは意味がないと思います」

 “ありふれたデータ”は、きっかけに過ぎない。

「試合の翌日、ある選手に『昨日スプリント10本だったぞ』と伝えても『あ、そうですか』で終わっちゃうと思うんです。でも例えば、指導者がその選手を褒めようとする場合、『89分、自分の陣地に戻る時、あれだけスプリントできていたよ。それは良いね』というコミュニケーションが生まれるんですよね」

 つまり「データの見える化」とは、「データに意味を持たせる」ということである。

 また逆に、叱る場合にも「コミュニケーションが生まれる」。ある試合で監督から「前半は飛ばしていこう」という指示が出ていたとする。そして試合後に「『飛ばそう』と伝えていたが、ボールを獲った後の前方へのスプリント、獲られた後の後方へのスプリント、全然できていなかったぞ」というアプローチも可能になってくる。

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