シュート25本も足りなかった揺さぶり
アジア最終予選の初戦は終わってみれば、いくつかの判定が試合の明暗を分けた。浅野拓磨のシュートがGKエイサに弾かれたものの、ボールがゴールラインを完全に超えていたシーン。あれを見逃されたことで同点ゴールが幻になってしまったことは日本としては納得行きがたいものだ。
ただ、ハリルホジッチ監督も試合後に「引き分けが妥当だったと思う」と認めるように、当初の目的だった勝ち点3に相応しい内容ではなかった。その理由としては選手のコンディションやスタメンが見込まれていた柏木陽介のアクシデントなどがあったことは確かだろう。ただし、戦術面でも相手に対して先手を取り、上回ることができていなかった。攻撃面には明確な問題点があった。
シュート数は25本と相手を大きく上回ったが、ブロックやGKの間合いを外した状態で持って行けた場面が限られた。その大きな要因が中盤でボールを速く動かして、相手の守備を幅で揺さぶることができなかったことだ。
酒井宏樹のクロスを除けば、日本は4-4-2の中で勝負をしていたのだ。中央突破を狙うことは全く悪いことではない。ただ、中央は中央、サイドはサイドという形で行ってしまい、横に展開するにしてもテンポが遅いため、守備を固める相手にとって全て想定内で守れているように見受けられた。
その中で例えば、前半44分にボランチの位置から大島僚太がバイタルエリアの左側に攻め上がり、戻したボールを本田圭佑がクロスに持ち込んだシーンは酒井宏樹のヘディングがGKの正面に行ってしまったが、完全に相手を崩した形だった。本田のクロスがファーサイドに飛んだ時に岡崎慎司と香川真司もホール前に入り込んでいるが、ディフェンスがうまく付けていなかった。
そこは酒井宏が直接シュートではなく、2人のどちらかに落とせていればゴールが決まった可能性は高いが、そうした短い時間に横の揺さぶりが入った形があまり無かったことはこの試合における得点の可能性を狭めてしまったように見える。