横行する架空の素材で構成される記事。球団・クラブはチェックするのか?
山本一郎(やまもと・いちろう)/1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる。統計処理を用いた投資システム構築や社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員、東北楽天ゴールデンイーグルス育成・故障データアドバイザーなど現任。東京大学と慶應義塾大学とで組成される「政策シンクネット」の高齢社会研究プロジェクト「首都圏2030」の研究マネージメントを行うなど、社会保障問題や投票行動分析に取り組む。「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊(文春新書)」など著書多数。【写真:Raita Yamamoto】
あたかも海外のサッカー選手や監督が対面で長時間喋ったかのように構成される“エアインタビュー”が後を絶たないのはどうしてなのか。
これまで本誌『フットボール批評』(カンゼン)では、『欧州サッカー批評』(双葉社)、『ワールドサッカーキング』(フロムワン)、『ワールドサッカーダイジェスト』(日本スポーツ企画出版)といったサッカーメディアのエアインタビュー記事を追及してきた。メディアによる「捏造」や過剰な「演出」が話題になることが多い昨今、マスメディアの信頼は地に堕ちようとしている。
空虚な記事はなぜ生まれるのか? 否、いかにして作られるのか? 負の連鎖を断ち切るためには何が必要なのか?
今回、本誌で一連の追及を続けてきた田崎健太氏と時事問題に鋭くメスを入れる山本一郎氏に登場いただき、メディアの問題点について語ってもらった。以下、9月6日に発売する『フットボール批評』から先行して一部掲載する。
田崎健太(以下田崎) 山本さんは、東北楽天ゴールデンイーグルスのフロント側の人間でもあります。球団関連のエアインタビューについてどの程度調査されていますか?
山本一郎(以下山本) 球団としてはメディアの露出は可能な限りチェックしています。ただ、その範囲は当然限られています。基本的に野球界の場合は日本語や英語と、台湾、韓国ぐらいしかカバーしません。
田崎 それ以外の言語で楽天の選手のエアインタビューが出ていたとしても、球団としては追い切れないと。
山本 ただ、野球全体でみるとある程度マーケットが限られているので、英語メディアを追っておけばほぼカバーできます。それ以外の言語、例えばスペイン語でその種の記事を発見したという関係者や読者の報告があれば、その時点で調べることになります。
田崎 第三者による指摘がなければ調べることはない、と。