兵役は「国民の義務」。アスリートにはある「特恵」が
今夏を盛り上げたリオデジャネイロ五輪がいよいよ幕を閉じた。サッカーではブラジルが自国史上初の金メダルを獲得し、歴史に名を刻んだ。ネイマールの号泣は記憶に新しい。残念ながら、韓国と日本はそれぞれベスト8、グループリーグ敗退という成績に終わった。特に韓国のメダル獲得失敗は、選手たちのキャリアへの影響は計り知れない。その影響とは”兵役の義務”だ。
兵役はおそらく日本の読者にはピンと来ない話であろう。韓国は1950年から始まった朝鮮戦争の休戦協定を1953年に結んでいる。すなわち決して戦争は終わったのではなく、北朝鮮とは”休戦”状態なのだ。
今でも年間20万人にのぼる19歳から32歳の若者たちが(軍隊の種類によって期間は相違であるが)社会と離れ、およそ2年間兵役の義務を果たさなければならない(筆者も韓国国籍を持っており、2010年から2012年まで海兵隊で義務を果たした)。
義務であるため、免れるためには正当な理由が必要だ。大きな怪我を負った前歴、障がい、不遇な家庭環境、移民による外国籍取得など免除の理由はそれぞれ。アスリートでも大きな怪我を負っている選手ならば一定の書類を提出し、身体検査を受けることで免除が可能だ。4年前、Kリーグの試合で膝十字靭帯断裂の重傷を負った韓国代表DFホン・ジョンホ(江蘇蘇寧)がこのケースに当たる。つまり、健康で、一般的な身体能力や環境を持っていれば、兵役の義務を果たさなければならないのだ。
しかしスポーツ選手には特例の手段がある。韓国兵役法第33条7項1号には「入隊対象の中、大統領令で定める芸術・体育分野の特技者として文化体育観光部長官が推薦する人を芸術・体育要員として編入することが可能」と書いてある。「大統領令」で定める条件は「五輪3位内・アジア競技大会1位」だ。
2012年ロンドン五輪での銅メダル獲得によって、ク・ジャチョル、チ・ドンウォン(以上アウグスブルク)、パク・チュヨン(元アーセナル、FCソウル。彼の場合はもう少し複雑。下記にて補足する)、2014年仁川アジア競技大会で金メダルを獲得したチャン・ヒョンス(元FC東京、現北京)などはこの制度が適用され、兵役の義務から免除された。