ツバル代表としてリオ五輪に出場するエティモニ・ティムアニ【写真:Getty Images】
現地時間5日に行われたリオデジャネイロ五輪の開会式では、出場するすべての国や地域の代表が入場行進でお披露目された。その中でオセアニアの小国ツバルの旗手を務めた選手が注目を集めている。
ツバルはハワイとオーストラリアの間にある4つのサンゴ礁に囲まれた島と5つの環礁によって構成された国で、人口約1万人は世界中の独立国の中でバチカン市国に次ぐ少なさだ。
その国の代表として五輪開会式で旗手を大役を果たしたのは、エティモニ・ティムアニというツバルから出場する唯一の選手だった。リオデジャネイロ五輪では陸上の100mにエントリーしている。
しかし、ティムアニは不思議なキャリアの持ち主だ。なんと普段はツバル代表経験を持つプロサッカー選手だった。国際サッカー連盟(FIFA)に加盟していない同代表は国際試合に出られないためほとんど知られていないが、国内リーグの選手によって構成され、主にツバル周辺の島国と試合を行っている。
ツバルにはサッカー場が首都フナフティの1つしかなく、そのピッチも満潮時には冠水してしまうこともあるなど劣悪な環境でプレーせざるをえない。国内リーグの8クラブは国を構成する各島や環礁の代表という役割を果たしているが、グラウンド不足により普段は首都フナフティで活動している。
そんな環境下で1991年生まれのティムアニは、2011年にサッカーとフットサルのツバル代表チームに選出されプレーしていた。だが、スペイン紙『エル・コンフィデンシャル』によれば、サッカーでは大成しないと判断して陸上競技へ鞍替えしたという。
かつてツバルでは、ティムアニと同じくA代表歴を持ちながら北京五輪に出場し、陸上100mで11秒48の記録をマークしたオキラニ・ティニラウという選手がいた。ツバルには陸上競技場がなく、ティニラウが練習していた場所も大潮になると地中から海水が湧き出て使えなくなるなど環境は十分と言えなかったが五輪で自己ベストを更新した。
国際陸上連盟(IAAF)の公式記録によれば今回リオデジャネイロ五輪に出場するティムアニの自己ベストは11秒72と、ティニラウより遅い。それでも国の威信を懸け五輪のトラックに立てば、前任者と同じく自らの壁を打ち破って歴史を作るかもしれない。予選を突破するのは難しい実力だが、異色の経歴を持つティムアニ渾身の走りに注目だ。
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