イグアイン、宿敵ユーベに移籍…なぜ「禁断」なのか?
9番のユニフォームが火をつけて燃やされ、トイレに流される。そんな画像がソーシャルメディア上を飛び交う――。昨季ナポリでセリエA記録となる36ゴールを挙げたゴンサロ・イグアインのユベントス移籍が濃厚になった7月末、ナポリのファンは激しい怒りを露わにした。
彼らにとっては、「禁断の移籍」だった。もともとナポリのファンは、ユベントスをことのほか敵対視している。近いところでは2010年、地元出身のファビオ・クアリアレッラが同クラブに移籍し、ファンの怒りを買っている。「ナポリにいた人間なら、自分があっちに行くことが何を意味するか分かるだろうに」と、イグアインの大先輩でナポリの“神”であるディエゴ・マラドーナは嘆いた。
ただ、選手が良い条件を求めて移籍すること自体は当たり前になっている。イグアインは当初ナポリとの契約を延長するつもりでいたが、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長が大型補強をする意思を示さなかったために、移籍を決意したのだという。ナポリもまた、ビジネスとしてイグアインを出すことも想定していた。契約には9450万ユーロの違約金を支払えば解除されるという条項が付いていた。そしてそれを支払うクラブが現れ、それがユベントスだった。それだけの話だ。
「デ・ラウレンティスは僕にいい振る舞いをしてくれなかった。もう一緒にいたくなかった。ユーベは僕を連れてくるために大変な努力をしてくれたから、僕は満足している」。ユベントスの入団会見でイグアインはそう話す。代理人を務める実兄のニコラスも「そもそも金を受け取って満足しているのは会長だ」と語った。
クラブには大金が入ったのだから、むしろファンはイグアインに感謝すべきだという言い方もできるかもしれない。しかし、彼らにとっては簡単に割り切れる話ではない。ユベントスへの憎悪は積年のもの、それもサッカーのみならず社会史にまで関わる根深いものだ。