ひと昔前、まだサッカーが現在のようなメジャースポーツとしての地位を確立する以前のこと。サッカーが一般に浸透しにくい理由の1つとして、「オフサイドルールが分かりにくい」という見解を耳にすることが少なくなかった。
今考えればほとんど言いがかりに近いようなものではある。しかし確かに、弱小サッカー部の補欠選手が避けて通れない「練習試合での副審(当時は線審という呼称だった)」という重大なミッションを初めて任された(と言うより押し付けられた)際には、ピッチの内外から罵声を浴びはしないかと緊張したものだ。というのも、得点に至る流れを左右しかねないオフサイドラインの監視こそが、副審の大きな役割を占めるからである。
ここで改めて、オフサイドの考え方を整理しておこう。19世紀のイングランドで始まったフットボールは、当初パブリックスクールごとに異なるルールで行われていた。これを受けて統一のルールが設けられ(この時、手を使うことを認めるラグビーと分岐)、この中に「ボールより前にいる選手にパスを送ってはならない」という決まりが含まれていたという。
もとよりスポーツとして普及し始めた当初から、サッカーにおいてはボールより前、すなわち相手ゴールに近い場所に味方選手を留まらせ、そこにパスを通すことは「待ち伏せ行為」に相当するため卑怯である、という考え方があった。
警告が与えられる反則の1つに「反スポーツ的行為」と称するものがあるが、これも現在のように多くの女性がプレーするようになるまでは、「非紳士的行為」と呼ばれていた時代がある。