EL三連覇監督を引きとめられず
大門より出でて人々の歓呼を浴びるのか、それとも医務室に運ばれることになるのか--。これは生き死ににも関わる闘牛においてよく使われる文句であるが、セビージャが今夏に足を踏み入れた場所も、あの円形の舞台のような危険を孕んでいるのかもしれない。
アンダルシアフットボールの雄は、ヨーロッパリーグ(EL)三連覇に導いたこれまでのモデルを捨て去り、その強烈な個性によって知られるアルゼンチン人指揮官のホルヘ・サンパオリに賭けることを決断したのだから。
もちろん、セビージャの決断は望んで下したものではなかった。EL三連覇に導いたウナイ・エメリがパリ・サンジェルマンから提示されたオファーに抗い切れず、セビージャとの契約を解消したのがきっかけだったのだから。
セビージャでもチャンピオンズリーグに挑戦できるのは変わらないが、やはり現代フットボールのヒエラルキーには逆らえない、ということだろう。そうして、セビージャの誇りと同義と称せる敏腕スポーツディレクター、モンチが後任に据えた指揮官こそ、2015年のコパ・アメリカでチリ代表を優勝に導いたサンパオリだったわけだ。
セビージャファンはサンパオリの到着から、期待と不安の入り混じった感情を覚えている。それは南米で名将と呼ばれる指揮官の実現しようとしているフットボールが、未知数であるためにほかならない。セビージャが今夏ここまでに獲得した6選手は全員が中盤の選手であり、サンパオリがEL王者に大きな変移をもたらしたことを感じさせる。
セビージャがまず獲得したのはパブロ・サラビア(ヘタフェから加入)と清武弘嗣(ハノーファー)。いずれもモンチがかねてより狙っていた選手で、その獲得はサンパオリの承諾を得て実現したものだった。
しかしながら、このアルゼンチン人指揮官は彼らだけでは満足することなく、マティアス・クラネビッテル(アトレティコ・マドリー)、ホアキン・コレア(サンプドリア)、フランコ・バスケス(パレルモ)の同胞3選手及び、ガンソ(サンパウロ)もモンチに獲得させた。