ボランチ・中村憲剛に苦しめられた前回対戦
明治安田生命J1リーグ2ndステージも4節を消化した。J1の全クラブと一通り対戦し、ジュビロ磐田は強豪と呼ばれるクラブに勝利したこともあれば、粘り強く勝ち点を拾うこともあった。収穫も課題もある中で、1stステージ第14節・川崎フロンターレとのアウェイゲームは、リーグ最高レベルとの差を痛感させられることになった。
あの試合をもう一度、振り返ってみたい。
磐田にとって、相手にボールを握られることは試合前からわかっていたことだ。川崎Fはエサを撒くようにボールの出し入れを繰り返す。サックスブルーも積極的に高い位置からアクションを起こそうとするが、川崎Fの攻撃は常に首元にナイフを突きつけているようなもので、不用意に出ていけばたちまち切り裂かれてしまう。
それでも、終盤までは磐田も集中力を保ちながら対応していく。特に3バックの左に入った森下俊の貢献度は高く、自身の持ち場はもちろん、時にはそこを捨ててでもボールに厳しくアプローチした。
水際で耐え忍んでいたものの、ジャブではなくストレートをひたすら浴びせるような川崎Fの猛攻に磐田の守備が決壊したのは88分。スローインから自陣右サイドで作られると、バイタルエリアをボールが横断する。最後は大久保嘉人のパスに抜けたエウシーニョの速いクロスを、小川大貴がクリアしきれずオウンゴールとなってしまった。
川崎Fの勢いを加速させる一因となったのが、中村憲剛のポジションチェンジだ。彼はトップ下でスタメン出場したが、前半38分の森谷賢太郎と大塚翔平の交代を機に、背番号14はボランチに移動することになった。
「その時点で俺らとしてはマルじゃない? これじゃ埒が明かない、と相手がやり方を変えてきたということだから」と名波浩監督は話したが、「憲剛からバンバン縦パスが入って、サイドチェンジもされて、ちょっと苦しくなったよね」とも述べている。森谷のプレーが悪かったわけではないが、中盤の底から中村がゲームを作り、『受けて捌く』をシンプルかつ丁寧に遂行する大塚が起点になることで、川崎Fはよりスムースに攻撃を構築していった。