大凡戦を一瞬で歓喜に変えたひとつのゴール
スタッド・ボラール=デレリスが歓喜に沸いた。
ナニの股抜きパスを受けたクリスティアーノ・ロナウドがシュートを放つ。GKが常人離れした反応速度で体を広げボールを弾いたものの、こぼれた先に走り込んでいたリカルド・クアレスマが頭で押し込みゴールネットを揺らした。
ポルトガル人の記憶には、EURO2016の決勝トーナメント1回戦、クロアチア対ポルトガルの延長後半終了間際に生まれたワンプレーがスローモーションのように焼き付いているだろう。117分間願い続けた先制点を奪って均衡を破り、ポルトガルはそのまま勝利して6大会連続の準々決勝進出を決めた。
試合開始からの90分間で両チームともゴールの枠内に1本もシュートを飛ばせず、大凡戦の様相を呈していただけに、PK戦突入もやむなしかと思われた最終盤の一発はより一層鮮烈に映った。
そして、このゴールは今大会のポルトガル代表を象徴する1点にもなった。自陣からボールを運んだのは新世代の象徴として存在感を放っていた18歳のレナト・サンチェスだったが、最終的にゴールを仕留めたのはナニ、C・ロナウド、クアレスマという“勝ち方”を知るベテランたちだ。
この3人にはもう一つ、ポルトガルで良質なウィンガーを輩出し続けてきたスポルティングCPの下部組織から巣立ったという共通点がある。これまでのキャリアは三者三様で、ドリブラーとして育成されながら成長の過程でそれぞれ違った形の進化を遂げてきた。
C・ロナウドは得点力を極限まで磨き上げ、ストライカー然とした役割を担って単独で試合を決定づけられる総合力の高いアタッカーに。後輩のナニは負傷に苦しめられた時期もあったが、直線的な突破力とアシスト能力を兼ね備えた万能ドリブラーへと成熟した。