復調の兆しを見せ始めたエースの放出
長谷川体制が発足した2013年以降、一年でのJ1昇格に成功し、2014年には三冠を独占。毎年タイトルを手にし続けて来たガンバ大阪を牽引して来たのは、間違いなく宇佐美貴史というタレントだった。
昨シーズン終了後にも欧州移籍が噂された和製エースが、再び海を渡ることが正式に発表されたのは6月20日。J1ファーストステージの最終節となる名古屋戦を最後に、宇佐美はブンデスリーガのアウグスブルクへ完全移籍する。
ACLではまさかの惨敗を喫し、ファーストステージでも波に乗り切れず優勝争いから早々に脱落。2013年に長谷川健太監督が就任して以来、決勝に残れなかったのはJ2時代の天皇杯と昨年のACLだけというずば抜けた安定感を見せ続けて来た大阪の雄が、再び試練の時期を迎えることになる。
懸念されるのは「宇佐美ロス」。今季序盤は本領発揮にほど遠く、ACLのグループステージ、水原三星戦では痛恨のPK失敗。リーグ戦でも本来の得点力を見せていたとは言えない背番号39ではあったが、市立吹田サッカースタジアムで自身初ゴールを叩き込んだ湘南戦以降、リーグ戦で3戦連発と「一つ出れば、爆発的に波に乗れる」という言葉を体現し続けている格好だ。
かつては芸術的なパスワークで常に主導権を握る攻撃サッカーを見せサポーターを魅了したガンバ大阪だが、長谷川監督の就任後は、手堅い守備とパトリックや宇佐美という前線の個の力を融合した勝負強いスタイルへと転換。それでもガンバ大阪を攻撃の雄たらしめていたのは、ひとえに華麗なゴールや抜群のシュート精度を誇る宇佐美のスーパーゴールがあったからに他ならない。
「チームにとっては痛い」。3試合連続でネットを揺さぶり、完全復調の兆しを見せ始めたタイミングでのエース流出をこう嘆いた指揮官だったが、決してサプライズではなかったことも事実だった。
長谷川監督は言う。「今年の冬にほぼ、クラブを出ると思っていた」。