逆輸入組のダヴィ、レアンドロ、バレー
ここ数年で規定路線となってしまったJリーグで活躍した外国人選手の中東クラブへの移籍。せっかく掘り出し物の選手を見つけても、オイルマネーでかっさらわれるのだから、Jクラブからしたらたまったものではない。
莫大な移籍金(正確には違約金だが、わかりやすいように移籍金と表記する)を残すかもしれないが、主力として活躍していた選手の穴をすぐに埋めるのは難しい。その資金で獲得した選手が必ず活躍する保証はどこにもない。環境やチーム戦術に合わない可能性は多々ある。
近年、そんな移籍事情の変化が見られる。ダヴィ(ウル・サラル→ヴァンフォーレ甲府)、レアンドロ(アル・サッド→ガンバ大阪)、そしてバレー(アル・アラビ・ドーハ→清水エスパルス)と中東から日本へ戻ってくる選手が増えてきたのだ。高給を求めて出ていった選手たちはなぜ再びJリーグにプレーする場を求めるようになったのだろうか。
そこには日本人にはない外国人選手の感覚と中東クラブ特有の事情が絡み合っている。ダヴィとレアンドロのケースから変化しつつある外国人選手の移籍事情に迫ってみよう。
したたかな移籍戦略で甲府へ来たダヴィ
ダヴィが日本へ戻ってきたのは2011年7月だ。期限付き移籍でヴァンフォーレ甲府へ加入。その年は重たい体が邪魔をして奮わなかったが、翌年はJ2得点王となり、チームを昇格に導いた。
ダヴィの場合、給料未払い(その後、無事に支払われたという)や妻がストーカー被害に遭うなど、中東から出ていきたい理由があった。それではなぜ、次の移籍場所を日本としたのか。中東事情に詳しく、ダヴィの単独インタビューも行ったことがある森本高史氏は語る。
「外国人選手は2部や3部のクラブを利用するのがとても上手い。ダヴィの場合もそう。たとえ降格しても次の年に活躍すれば、より大きなクラブへ移籍できることを見越して甲府を選んでいます」
実は甲府の前にダヴィは中国のクラブ(北京国安)へ移籍しているが、馴染めずに1ヶ月で解雇されている。確実に活躍することを考えて、勝手知ったる日本を選んだのだろう。愛嬌のある顔のダヴィだが、移籍戦略は実にしたたかだ。
だが、中東に行ったことで給料はかなり上がっている。期限付き移籍なので移籍金はかかっていないが、甲府が同等の待遇を用意できたとは考えにくい。
「甲府での正確な年俸は明かされていませんが、恐らく1000~2000万円程度ではないでしょうか。ダヴィにとっては破格、バーゲン価格と言ってもいい値段ですが、それでも構わないのです。その先に移籍したクラブで取り戻せればいい、と考えているからです。現に彼は鹿島アントラーズへの移籍で、3年契約を結びました。給料未払いを経験している彼にとって3年間給料が保証されるのは重要です。年俸も甲府の何倍にもなっているでしょう」(森本)
甲府にとっては踏み台にされた格好とも言えるが、見方を変えれば、期間限定であればプロビンチャのクラブでも得点王になれそうな選手を連れてくることは可能だということだ。なんとしても昇格、もしくは残留となったときのカンフル剤として利用することはできる。