オランダ移籍が噂される堂安律(左)と小林祐希(右)【写真:Getty Images】
オランダ移民局は21日、日本国籍保有者に対し特例として認めていた労働許可証なしでの滞在を今年10月1日から廃止すると発表した。
日本とオランダの間には1912年に締結された「日蘭通商航海条約」が存在し、2014年12月にはオランダの最高行政裁判所がこの条約に基づいて日本人がオランダで働くために労働許可を申請する必要がないと定めていた。
元々は「日蘭通商航海条約」には日本国籍保有者をオランダにおいて労働許可を得る必要がないスイス国民と同等に扱う「最恵国待遇」が含まれていたため、日本人が高度人材外国人規制などに従う必要がなく熟練労働も単純労働も行うことができる決まりだった。
しかし、10月以降は2014年以前のルールに戻ってしまう。そしてサッカー界にも当然影響が及ぶかもしれない。それはEU圏外選手に対して設けられた「最低年俸規定」の復活だ。
オランダでは自国選手の雇用を守るため、EU加盟国外の国籍しか持たない選手とは同国リーグの平均年俸の1.5倍以上の金額で契約しなければならない。よって日本人を獲得する場合、「日蘭通商航海条約」の有効性が判明するまでは最低年俸として約40万~45万ユーロ(約5000万~6500万円)が必要だった。
オランダサッカー協会は「日蘭通商航海条約」に基づいて日本人選手は自由にオランダリーグでプレーできると発表し、度々移籍の障害になっていた最低年俸規定がなくなっていたものの、10月に労働許可なしでの滞在が廃止されることでこの規定が復活する可能性がある。
現在オランダ1部のフィテッセでプレーする太田宏介は条約によって保障された権利を利用した初めてのケースだったが、10月以降オランダへ移籍するためには年俸5000万円以上の評価を受けるような選手、つまり日本代表の中心クラスでなければならなくなってしまうのだ。
この変化が夏の移籍市場にも影響するかもしれない。ヘーレンフェーン移籍が噂されるジュビロ磐田の小林祐希や、PSVアイントホーフェンからのオファーが判明したガンバ大阪の堂安律がオランダ行きを急ぐ理由になりうる。
もしも今夏のうちにオランダへ移籍できなければ、冬の市場での再チャレンジは難しい。特に堂安は18歳ということもあり、年俸5000万円以上の評価を得られないだろう。果たして2人はどんな決断を下すだろうか。このタイミングを逃せばオランダ挑戦は夢のまま終わってしまうかもしれない。
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