外国人への門戸は開けっ放し
スペインは近年、少子化による労働力の低下を中南米やアフリカからの移民で補ってきた。誤解を恐れず簡単に言うと、働きも子作りもしないスペイン人に代わって出稼ぎにやってきた外国人労働者達が国の経済を支えてきたわけだ。そしてそれは、どの時代も多数の大物外国人選手がリーグを盛り上げ、欧州におけるトップレベルを保つ役割を果たしてきたサッカーにも当てはまる。
それにスペインは、外国人が住むには天国のような国だ。気候は良いし、ご飯もおいしい。時間の流れは穏やかで、治安も良い。しかも元植民地の中南米出身者などに対してはビザ発給の基準がやたらと緩く、特にサッカー選手となれば数年間プレーしている間に二重国籍を取得することができる。
来る者は一切拒まず。無責任なまでに扉を開けっ放しにして移民を受け入れてきたこの国では、古くはアルフレド・ディステファノ、近年ではマルコス・セナといった帰化選手が活躍してきた。
さらに90年代半ばから移民の流入が急増した影響により、近年ではベネズエラ出身のジェフレン・スアレスや赤道ギニアにルーツを持つエミリオ・エンスエなど、移民の2世としてスペインで生まれ育った選手が多数台頭してきた。バスク純血主義を貫くアスレティック・ビルバオすら例外ではなく、09年にはアンゴラ人の父を持つホナス・ラマーリョがクラブ史上初の黒人選手としてデビューしている。
同様に、元ブラジル代表MFマジーニョの息子チアゴとラファエルのアルカンタラ兄弟、元ユーゴスラビア代表選手の父親を持つボージャン・ケルキッチなど、引退後もスペインに定住した外国人選手の子供が代表入りを果たすケースも出てきている。
レアル・マドリーに所属するジネディーヌ・ジダンの息子エンツォのように、15歳の段階から母国フランスとスペインの両サッカー協会が代表入りを巡って取り合いになることも最近では珍しくない。