たとえBBCでも徹底抗戦
「彼の最後の会見で、我々メディアは拍手をするのだろうか?」
マンチェスター・ユナイテッドの試合を数多く取材してきた『タイムズ』紙のチーフライター、オリバー・ケイ記者はアレックス・ファーガソン退任を前に、そう寄稿している。
何しろ、このスコットランド人指揮官のキャリアは、英国メディアとの戦いの連続だったのだ。メディア関係者の多くが、「彼と親しい記者はいない」と証言しているほどに。
ルールを守らない記者は問答無用で出入り禁止(ただし、時限措置が多く、たいていは2週間程度の“イエローカード”)。
また、相手がたとえ国営放送BBCであっても、とことん戦った。
2004年、BBCは『父と息子』というドキュメンタリー番組において、ファーガソンが息子のジェイソン(選手代理人)への利益誘導を行っていると報道。これに激怒したファーガソンは、2011年8月の和解まで、BBCのインタビューを一切受け付けなかった。
プレミアリーグの試合後の記者会見も常にボイコット。地元記者たちは、プレスラウンジのTVに映るインタビュー(スカイ、クラブ公式TV)の映像を拾い、翌日の記事の素材にしている。
なぜ、ファーガソンはそれほどまでの緊張関係を取材者に強いたのか。
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