広大な大地にあまりに少ない9つのクラブ。そこには特殊な事情が
豪州国内のサッカー・ヒエラルキー最上位である11年目を迎えたAリーグ。先日、日本のJリーグと相互パートナーシップ協定を結ぶなど、厳然たる“豪州1部”リーグとして対外的にも認められた存在であることは間違いない。
しかし、今のAリーグの有り様は、豪州というアジアのサッカー強国にふさわしいものだろうか。11年目のシーズンを終えたこの段階で、Aリーグの抱える問題点のうち重要な幾つかに関してあえて提言してみようと思う。
豪州は、一つの国が一つの大陸を占める他に類を見ない特殊な地理的条件下にある。その広大な国土に散らばる現行の9チーム(筆者注:現行のAリーグの所属クラブ数は10。1チームは隣国のニュージーランドの首都ウェリントンを本拠地とするウェリントン・フェニックス)でのリーグ構成が妥当かというと疑問は拭えない。
似たような広大な国土を持つ他国、たとえばロシアの16、米国の20に比べても、そのクラブ数の少なさは際立つ。広大な国の面積から考えたとき、9という数は余りに少なく、これが豪州国内のトップリーグの適正クラブ数だとは思わない。そこは、豪州サッカーの総元締たる豪州サッカー連盟(FFA)をはじめ、この国のフットボール・コミュニティが広く同じ問題意識を共有している。
とはいえ、「では、エクスパンションで増やしましょう」というほど、話は簡単ではない。上記のロシア、アメリカとは比較にならないほどに少ない人口が、国土のごく限られた沿岸部の都市部に集中する地勢的事情。
そして、競合のプロ球技が非常に多いマーケティング的な要素も考慮に入れれば、闇雲なエクスパンションができない事情を抱える。人口密度のアンバランスは、フランチャイズを置けるエリアを非常に限定的なものとしているうえに、少ない都市圏の観客動員のパイをサッカー・クラブ間だけでなく、ラグビーなどその他のプロ球技とも競合しながら経営を成り立たせられる(またはそう見込める)フランチャイズのパイはそう多くは残されていない。