消極的とすら思えたジダンのマドリー
レアル・マドリーとアトレティコ・マドリーのチャンピオンズリーグ決勝を舞台としたダービーは、苦しみ抜くことを運命づけられているかのようだ。
2年前にリスボンで行われたダービーでは、アトレティコが36分にゴディンのゴールで先制したものの、93分にセルヒオ・ラモスが起死回生の同点弾を決め、延長戦の末マドリーが4-1で勝利。そして今季、ミラノで実現した2回目のCL決勝ダービーは、疲労困憊の末のPK戦というドラマ性の根付いた展開で、マドリーが再びビッグイヤーを掲げている。
試合の立ち上がり、マドリーはアトレティコが持ち得る最大の武器である確信とともにプレーに臨み、逆にアトレティコが精神的な弱さを露呈した。15分のセルヒオ・ラモスの先制点はオフサイドであった可能性が高いが、序盤のマドリーはスコアを動かすに値したと言える。
しかし、先制したことを受けたジダンは方針を変え、アトレティコを待ち構えることを選択。選手たちを20メートル程後退させて、追加点を決める手段としてカウンターを選んだ。
ジダンのこの決定は、堅実的という範疇を超えて、消極的とさえ称せるものだった。カゼミーロという守備に特化する選手がアンカーを務めようとも、マドリーの長所はやはり守備にはない。
左ウィングのベイルが献身的な守備を見せていたのをはじめ、選手たちは細心の注意を払っていたものの、アトレティコに主導権を譲ったという感覚が何よりも先んじていた。
一方アトレティコは、主導権を与えられながらも動きは鈍いままで、簡単にボールを奪われる状況が続いた。これを受けたシメオネはハーフタイムに行動を起こし、アウグスト・フェルナンデスをカラスコに代えてフォーメーションを4-4-2から4-3-3に変更。ガビをアンカー、その両脇にサウール&コケ、前線に右からグリーズマン、フェルナンド・トーレス、カラスコを据えた。
46分にはグリーズマンがPKを外したアトレティコだが、その後カラスコが攻撃に鋭さを与え、譲られていた主導権をようやく生かし始める。カラスコは負傷したカルバハルに代わり、ダニーロが守ることになったサイドを何度も切り裂いた。