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バルサは伝統を捨てたのか? 経営面から見る胸スポンサーを導入せざるを得なかった理由

2006年、バルサ100年以上の誇りに終止符が打たれた。ユニフォームの胸部分に初めてロゴが入れられたのだ。今やバルサの経営に欠かせない収入源となった胸スポンサーから、バルサの経営に迫る。

text by 小澤一郎 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

【フットボールサミット第12回】掲載

クラブ以上の存在だったが…

「バルセロナはフットボールクラブ以上の“何か”である。それは日曜日にプレーを観に行く場所であり、単なる娯楽以上の施設である。すなわち、全てのもの以上の存在であり、それは我々の心の中に深く根ざしている精神、カラーである」

バルサは伝統を捨てたのか? 経営面から見る胸スポンサーを導入せざるを得なかった理由
バルサは1899年の創設から約107年もの間、ロゴは一切入っていなかった【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 これは1968年の1月17日、第32代FCバルセロナの会長に就任したナルシス・デ・カレーラスの就任演説の一部であり、現在バルサのスローガンとして定着した『mes que un club(クラブ以上の存在)』のきっかけとも言われる演説である。

 とはいえ、熱狂的なバルセロニスタを除き、多くのサッカーファンはこの名演説を知らない。今や世界中に存在するバルセロニスタの多くは、2006年9月以降にバルサのユニフォームを通し、この『クラブ以上の存在』という言葉を目にしてきたはず。

 2006年9月以前、つまり1899年の創設から約107年もの間、ロゴは一切入っていなかった。もちろん、多くのサッカーファンであれば、これは常識であろう。しかし、バルサが100年以上も守ってきた「ユニフォームに企業名を入れない誇り」を変える背景には、いくつかの要因があった。

 まず、ユニセフのロゴを入れることになった経緯に触れる前に、一般的なサッカークラブの収益構造の変化について説明する必要がある。1980年代、各クラブの収益源はまだ単一的で、クラブの会員による会費とシーズンチケット及び一般販売のチケットの売り上げのみであった。

 公共放送による試合の独占放送が終わり、民間のテレビ局が台頭し始めると、今度はテレビ放映権料が従来の収益を大きく上回っていく。それ以降、クラブにとって大きな収益源を占めるテレビ放映権料の管理は、クラブ経営における最重要項目となっていった。

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