強大な権力に立ち向かうチームこそアトレティコ
トーレスにまつわる壮大な物語の仕掛け人は、一体誰であったのか。本人の言葉によると、それは彼の祖父エウラリオだった。
「学校では、ほぼすべてのクラスメートがレアル・マドリーのファンだった。僕は納得がいかず、いつも祖父の下へ駆け寄ったよ。祖父は簡単な言葉を使いながら、アトレティコのことを語ってくれた。
彼の話は選手たちのことじゃなかった。マドリッドの紋章である熊がエンブレムに入っていることなど、アトレティコが僕たちマドリッド市民にとって、どのような存在かを真剣に教えてくれたんだ。
心に染み入ったのは、この100年の歴史を持つ組織を支えてきたメンタリティーだね。懸命な努力、献身の姿勢、マドリーという存在に押しつぶされない忍耐力、彼らとは違う形で巨大な存在となることを目指す野心……。
祖父から何度も言って聞かされたのは、努力を怠らず、決してあきらめることなく戦い続けることだった。誰かの助けなど必要とせず、強大な権力に立ち向かうチームこそアトレティコ。だから祖父、そして僕は、永遠にこのクラブの人間であり続けるんだ」
時は流れて、1995年。11歳となり、顔がそばかすにまみれたトーレスは、マドリッドの南、アギラス地域に位置するクルセス公園のピッチで、アトレティコのセレクションに臨んだ。この緊張の場でも驚異的な得点力を誇示した彼は、数週間後に二次セレクションも突破し、憧れのクラブのカンテラ入りを果たした。