守備ブロック増強とともに可能になった2トップ
2015-16シーズンのプレミアリーグは、誰も予想だにしなかったレスター・シティの優勝で幕を閉じた。しかも、終わってみれば2位のアーセナルとは10ポイントの大差。シーズン前の降格候補が、ぶっちぎりの優勝である。
スタープレーヤー不在のレスターはハードワークで栄冠を獲得している。ジェイミー・ヴァーディー、リヤド・マハレズ、エンゴロ・カンテは新しいスターになったとはいえ、レスターの強みは個人能力ではなく全員の労を惜しまない運動量と組織力にあった。
システムは4-4-2。2000年代には下火になっていたが、13-14シーズンにアトレティコ・マドリーがリーガ・エスパニョーラに優勝したのを境に復活した。アトレティコは、従来の8人による守備ブロックを10人に増員して守備を強化した。
守備が強化できたので、2人のストライカーを起用する余地も生まれた。主流になっていた4-2-3-1の1トップから2トップを復活させたポイントは10人ブロックの全員守備である。
レスターの4-4-2は、アトレティコがリバイバルさせた4-4-2と同じだ。岡崎慎司とヴァーディーの2トップは、味方のMFラインに近づいて連係して守り、10人の守備ブロックを形成している。
新型4-4-2のポイントはFWの負担が大きい。
従来は、相手のセンターバックにプレッシャーをかけ、サイドバックへボールを吐かせれば守備の仕事はほぼ終わりだった。しかし、新型4-4-2ではさらにサイドバックから中央への横パスに対しても守備ができるポジションをとる。
FWが下がることで、相手の横パスに対してFWとMF(ボランチ)の挟み込みが可能になり、FWとMFの間のスペースで相手に自由にボールを持たれるリスクをかなり軽減できる。FWが守備組織の歯車に組み込まれたことで、守備ブロックはより強固になった。
FWの守備参加は新型4-4-2の生命線といえる。レスターではハードワーカーの岡崎はもちろん、チーム総得点の35パーセントを叩き出したヴァーディーも献身的に守備をしていた。