アトレティコの守備意識を変えたボアテング
ジョゼップ・グアルディオラ体制の締めくくりとしてUEFAチャンピオンズリーグ(CL)制覇を目指していたバイエルン・ミュンヘンの夢は準決勝で散った。アトレティコ・マドリーとの2試合はどちらも決勝といえるほどハイレベルで緊迫した好ゲームだったことは間違いない。だが一歩及ばなかった。
第1戦を1-0の勝利で終え、アウェイの地ミュンヘンでの第2戦に臨んだアトレティコがなぜ決勝進出を果たせたのか。鍵になった4人のプレーをもとに分析する。
1人目は対戦相手であるバイエルンのCBジェローム・ボアテングだ。第1戦は負傷からの回復が間に合わず欠場していたが、グアルディオラ監督は復帰してすぐ迷わず先発メンバーに組み込んできた。それだけ信頼を置かれた存在は、自らの価値をプレーで証明している。
まず第1戦でバイエルンが後手を踏んだ理由として後方からのビルドアップがそれほど機能しなかったことが挙げられる。第1戦ではハビ・マルティネスとダビド・アラバがCBでコンビを組んだが、どちらもアトレティコの執拗なプレスに苦しんでサイドに逃げる場面が多かった。
一方、ボアテングは右足でも左足でも精度の高いパスを前線に供給することができ、プレッシャーが比較的弱い後方から安定した質の高い縦パスを配球していく。
すると試合開始時は4-4-2でスタートしたアトレティコも、13分経つと2トップの一角を張っていたアントワン・グリーズマンを右サイドに下げ4-1-4-1に布陣を変更して全体の重心を下げざるを得なくなった。
しかし、これでさらにボアテングへのプレッシャーが弱くなり、1本の縦パスからトーマス・ミュラーとロベルト・レバンドフスキに決定機を作られたことで再び布陣を試合開始時の4-4-2に戻した。元々攻撃に出る必要のなかったアトレティコがより守備意識を高め、失点のリスク回避に動くきっかけを作ったのは相手DFが見せたパスだった。