「お話をいただいたときは大変光栄でした」
フラッシュの洪水が、なでしこジャパンの新たな門出を祝福する。リオデジャネイロ五輪への出場を逃してから約1ヶ月半。再建を託された48歳の新監督は、ネームプレートを持参しながら登壇してきた。
そこには、こんな文字が刻まれていた。
「なでしこジャパン日本女子代表 監督 高倉麻子」
27日午後4時半から、東京・文京区の日本サッカーミュージアムで急きょ行われた緊急会見。会場となったバーチャルスタジアムに100人近いメディアが駆けつけ、民放テレビの情報番組内で生中継も行われるなかで、第11代監督にして初めての女性指揮官となる高倉監督は注目の第一声を発した。
「私が新しく監督としてやることは、いままで積み上げられてきたものにさらに磨きをかけて、もっと高いところに選手を連れていくことと考えています。日本人は非常に器用で勤勉で頭がいいと思っています。
戦術理解力も高いですし、何よりも人のために組織として大きな力を発揮できる。それがなでしこジャパンの大きな力になったと思いますし、そのことを大切にしながら日本人にしかできない、日本のサッカーというものを追求していきたい」
2枠の五輪切符を争ったアジア最終予選で敗れたことを受けて、約8年3ヶ月にわたって指揮を執り、日本女子サッカーの歴史に一時代を記した佐々木則夫前監督(現十文字学園女子大学副学長)が退任した。
その最終予選はオーストラリア女子代表との初戦で苦杯をなめ、韓国女子代表との第2戦で引き分けた時点で雲行きが怪しくなった。佐々木前監督の去就も取り沙汰されるなか、次期指揮官の筆頭候補としてメディアで名前があがっていたのが高倉監督だった。
当時の心境を、高倉監督は表情を引き締めながらこう振り返る。
「もしそういうことがあったら、ということは頭のなかにありました。最初の時代に選手として必死に戦ってきて、それをいまの世代のなでしこの選手たちが大きな花を咲かせてくれて、またバトンが戻ってきたら受け取ろうと考えていたので、実際にお話をいただいたときは大変光栄でした。簡単な仕事ではないと感じていますけれども、ぜひやらせてくださいとお答えしました」