「シンジこそ今までのユナイテッドに欠けていたピースだ」
レバークーゼン戦5-0勝利から一夜明けた朝、近所のニュースエージェント(新聞屋)で英各紙を買いあさっていると、ユナイテッドサポーターのマットが、顔を紅潮させて話しかけてきた。「昨日の試合を見たか?」。気のいい大工のマットは、僕が香川の取材をしていることを知っている。
「もちろん」と応じると、「シンジこそ今までのユナイテッドに欠けていたピースだ。これからモイーズはシンジを使い続けなくちゃいけない。シンジがいてはじめて中盤とFWがつながったじゃないか!」と、それは真剣な表情でまくしたてた。
「しかしロビンが帰って来たらどうなんだい?」と切り返すと、マットはその人の良さそうなひげ面をゆがめて「うーん」とうなると、そのまま黙り込んでしまった。
同日のデイリー・テレグラフのチーフ・ライター、ヘンリー・ウインターも11月28日付の紙面上で、僕と同じ懸念を指摘していた。
曰く、「この試合で誰よりも走ったのが香川。12.4キロを精力的に走破した日本代表MFのその動きが、相手にとって常に脅威になった。またルーニーと見事な連携も見せた。しかし、ファン・ペルシーが復帰すれば、彼はまた左サイドかベンチに追いやられ、フラストレーションを溜める日々に戻ることになるだろう」と。
話は先週の金曜日にさかのぼる。11月22日、チェルシーの定例会見に出かけた。ジョゼ・モウリーニョにひとつ直接尋ねたいことがあったからだ。この前週、ポルトガル人闘将がレアル・マドリーに香川を引き入れようとしたことを認めていた。僕は、マドリーでどのように香川を起用したかったのか聞きたかった。
しかし、僕の質問を聞いた瞬間、闘将の顔は曇った。それは予想できたことだった。