“打たせない”守備と“打たせる”守備
試合の優劣を見極める上で、重要な指標の1つとなっている「シュート数」。一部のテレビ中継ではスコアの下にカウントが表示され、多くの数を記録すればそれだけで1つのニュースともなり得る。
データアナリストの庄司悟氏が算出したデータを基にこのシュート数を分析すると、各チームが持つ戦略が見えてくる。
まず参考にしたいのは10年前の2006年に開催されたW杯ドイツ大会。この大会を制したイタリアは、全7試合でわずか2失点。それもグループリーグ(GL)第2戦米国戦でのザッカルドのオウンゴールとフランスとの決勝戦でジダンに決められたPKの2本。流れの中からは1つの失点も許さず、“カテナチオ”の名にふさわしい強固な守備網を築いていた。
また、PK戦の末に準優勝に終わったフランスは7試合で失点は3。その内訳は、GL第2戦の韓国戦で朴智星に決められたゴールと決勝T1回戦スペイン戦でのビジャのPK、そしてイタリアとの決勝でCKからマテラッツィに決められたもの。流れの中での失点は朴智星によるゴールのみであり、こちらもイタリアに負けず劣らずの堅守を誇っていた。
しかし、この2チームの「被シュート数」を見ると、意外な事実が浮かび上がってくる。
まずはイタリア。イタリアはオウンゴールとPKによる2失点ながら、被シュート数はベスト4進出チーム中最多の80本を記録している。
このデータについて、庄司氏は「ブッフォンというGKとカンナバーロというCBを擁して『この位置、この形であれば打たれてもOK』というスタイルを持っており、対戦相手を袋小路に追い込んでいた」と分析している。つまり、イタリアの被シュートは“打たれた”のではなく“打たせていた”ということ。
対してフランスの被シュート数は51。こちらはベスト4中最少の数字となっており、庄司氏は「マケレレとヴィエラという強力な中盤を中心に相手にシュートすら打たせない“ガチガチ”の守備を展開していた」と語った。
W杯のようなトーナメントでもリーグ戦でも、最終的に優勝を争うのは守備力の高いチームと言われるが、この10年前のW杯で優勝を争った2チームは同じ堅守でも全く異なるプランで戦っていたことがわかる。
では、このデータをJリーグで見ていくとどうなのだろうか。