選手・監督紹介時に最大のブーイングを受けた名波浩監督
キックオフが迫り、埼玉スタジアム2002の雰囲気が高揚していく。真っ赤に染まるホームのゴール裏が、磐田の選手・監督紹介で最も大きな反応を示したのは誰だったか。それは現役時代、ピッチ上に数々の芸術を生み出してきた名波浩に対してだった。サックスブルーを率いて約1年半の青年監督に、浦和サポーターは特大のブーイングをスタジアムに轟かせた。
Jリーグ、そして日本サッカー界にその名を刻んだレジェンドは、類まれなカリスマ性に気さくさを持ちあわせる。厳格なボスであり、選手たちから慕われる兄貴分でもある指揮官は、古巣をJ1の舞台に導いた。名古屋グランパスとの開幕戦を落としたチームは、第2節で昨季1stステージ王者が待つ埼玉スタジアムに乗り込んだ。
攻守において自分たちからアクションを起こす、というチームの目指すスタイルではなかったことは間違いないが、磐田は泥臭く戦いながら浦和と互角に渡り合い、そして勝ち点3を掴み取った。
「『まさかアウェイの浦和で』と思っている方もいるかもしれないですけど」と試合後に名波監督が笑ったように、この結果を番狂わせと見る人も多いだろう。だが、勝利には理由がある。理想とはかけ離れていたが、現実を正確に見据えてこのビッグゲームに臨んだ。
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