噛みつきに人種差別。そのイメージはダーティーに染まるが…
ストライカー=エゴイストというのは、サッカーの長い歴史で築かれた常識ともいえる。そのために、ゴールチャンスで自らにボールが渡らなければ味方に不満をぶつける、より可能性の高い味方にパスを出さず無理矢理にでもシュートを放つ、PKキッカーの座を奪う…など多くの逸話があり、批判の声とともに「ストライカーとはそういうもの」とされてきた。
近年、最も記憶に新しいストライカーの強烈なエピソードといえば、ルイス・スアレスの“噛みつき事件”である。リバプール時代にチェルシーのDFイバノビッチの腕に噛みつき10試合の出場停止処分。さらに14年ブラジルW杯でイタリア代表のDFキエッリーニにも噛みついて4か月の活動禁止や代表戦9試合の謹慎処分を受けた。
加えてスアレスは、人種差別発言でも出場停止処分を受けた過去があり、そのイメージはダーティーに染まり、“悪童”と揶揄された。それでもピッチで圧倒的な得点力を発揮する様は、ある意味で典型的なストライカーのものと感じていた人も少なくはないだろう。
しかし、実際のスアレスのプレーを見れば、そのイメージは大きく覆される。エピソードの数々が信じられないほどに。
3月6日、リーガエスパニョーラ第28節において、バルセロナはアウェイでエイバルと対戦。スアレスはいつものようにバルサの最前線に立った。しかし、MSNと謳われる3トップのうち、ネイマールが累積警告による出場停止で不在。代わって20歳のムニルが左ウイングを務めた。
試合は90分を総評すると、いつも通りのバルサの勝利。4-0というスコアは通常であれば大勝と言われるものだが、もはや特別騒ぎ立てる結果ではなくなっている。それはそれで恐ろしいことではあるが。