開門前から長蛇の列ができたヤマハスタジアム
開門前からスタジアムの外には長蛇の列ができていた。クラブカラーであるサックスブルーを身につけた人々の笑顔が、ジュビロ磐田への期待を色濃く表していた。
2013年にJ2へと降格して以来、クラブは苦しみながら歩みを進めてきた。2014年は昇格プレーオフ準決勝で山形の山岸範宏にヘディングシュートを決められ、敗退。滅多にお目にかかれないGKの得点は多くの人の注目を集めた。
山岸は『山の神』と崇められ、一躍時の人となった。一方で磐田はミラクルの引き立て役に回り、『GKにゴールを決められたクラブ』として発信された。この年の途中から指揮を執った名波浩監督は、「世界中に恥を晒した」とこの敗戦を振り返っている。
決意を持って臨んだ昨季は24勝10分8敗の成績を残し、2位で自動昇格を果たした。終盤の13試合無敗はチームの勢いとJ1復帰への強い意志を感じさせた。その意志はチームの戦い方にも表れており、昨季からJ1仕様のチーム作りを進めたうえで昇格を勝ち取っている。
磐田が名波監督の下で培ってきたサッカーは、後ろに下がって相手の攻撃を耐えしのぐような引っ込み思案なものではない。ボールに多くの選手が関わり、能動的に仕掛けていくことがベースにある。そうすることで選手間の距離が保たれ、たとえボールを奪われても素早く相手にアプローチをかけることができる。
だが、このスタイルは前線に明確なターゲットやスピードスターがいる時の対応を考えなければならない。まさに名古屋はそうしたチームで、199cmのシモビッチとJ最速の永井謙佑がいるため、名古屋が『5人目まで連動するサッカー』を掲げていたとしても、磐田としてはその点を警戒しなければならなかった。