ユベントス戦で声援を送るバイエルンサポーターたち【写真:Getty Images】
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16屈指の好カードとして注目を集めたユベントス対バイエルン・ミュンヘンの1stレグが23日に行われた。
ユベントスの本拠地トリノで開催されたこの試合、アウェイまで応援に駆けつけたバイエルンサポーターの多くが開始から30分経過するまでスタジアムに入場できなかったことが話題になっている。しかしこれには理由があったようだ。独『TZ』が報じた。
バイエルンのファンはバスでスタジアムに到着し、厳重なセキュリティチェックを受けたという。アウェイ席のチケットは完売しており、試合開始前に満員となるはずだった。だがイタリアでスタジアム入場に必要な「テッセーラ・デル・ティフォーゾ」と呼ばれるサポーターそれぞれに割り当てられたIDカードを所持していない者が多く、入場の手続きに長い時間を要してしまった。
CLのチケットは個人情報と紐づけられるなど、厳重なセキュリティ管理が実施されている。そしてもう1つ、イタリアの歴史的背景が関係していた。
今回バイエルンを応援しようとトリノを訪れたサポーターには、イタリア北部ボルツァーノ自治県の住人が多かったという。この地域は17世紀から20世紀序盤までオーストリア=ハンガリー帝国領で、1919年にイタリアに併合された。その当時の住民の大半はドイツ語話者だった。
その後第二次世界大戦でイタリアが連合国に降伏された後、今度はドイツ軍に占領されユダヤ人や政治犯のための強制収容所が設置された(形式上はイタリア領だったが事実上の併合だった)。そのため今でもドイツ系住民が多く居住し、1960年代にはイタリアからの独立運動の機運が高まったこともある。
いまではイタリアに属しながら相当の自治権が認められている。また7世紀に移住してきた民族がバイエルン人だったことから、歴史的に見てドイツやバイエルン・ミュンヘンと縁が深い地域とも言える。現在の住民にもドイツ語話者が25%ほどおり、彼らは自らがイタリア人であることを認めていないため、イタリア人のためのサポーターIDカードを持っていなかったようだ。
先日のローマ対レアル・マドリーでもアウェイサポーターの入場が問題になったが、今回のユベントス対バイエルンには1200年前から続く深い縁と相当の文化的要因があった。
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