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FIFA、視線は中国へ。アリババ社による“爆買い”の先に見るもの

text by 植田路生 photo by Getty Images

FIFA、視線は中国へ。アリババ社による“爆買い”の先に見るもの
FIFAマーケティング担当のティエリー・ワイル氏(左)とアリババ社のチャン・ダージョン氏【写真:Getty Images】

 2015年12月9日は1つのサッカー史の転換点となった。FIFAが中国のアリババ社とクラブW杯におけるパートナーシップの締結を発表したのだ(正確にはアリババのグループの1つである自動車ブランド、アリババE・オート)。

 トヨタが降りた時点で新スポンサーは未定であったので、金銭面でアリババ社がトヨタと競り合い、勝ち取ったという可能性は低い。だが、FIFAの視線が中国へ向けられたのは理由がある。

 FIFAにとっての大義はサッカーの普及だ。1994年、かつてサッカー不毛の地と言われたアメリカでのW杯開催はFIFAにとっての悲願だった。紆余曲折はあったが、アメリカでサッカーは徐々に浸透。国内リーグ・MLSは成功したプロリーグの1つとみなされている。

 W杯開催国をめぐってはテーブルの下で巨額の裏金がやり取りされるなど、黒い部分ばかりが昨今はフォーカスされてしまったが、大義が失われたわけではない。欧州と南米以外となる日韓、そして南アフリカでのW杯開催もその目的があった。

 9日の記者会見でFIFAマーケティング担当のティエリー・ワイル氏は「これは長期的なパートナーシップ。8年契約を考えている」と長い将来を見据えた上での契約であることを強調。蜜月ぶりを感じさせた。

 また、同席したアリババ社のチャン・ダージョン氏は「クラブW杯の中国開催は積極的に進めたい。開催したいと思っている」と野心を隠さない。同大会は、2016年までは日本、2017・18年はUAEでの開催が決まっているが、2019年以降、中国で行われる可能性は極めて高いと言える。

 中国には13億人という圧倒的な人口の力がある。今回のアリババ社との契約は巨大国家・中国をサッカーに染め上げる第一歩に過ぎない。ワイル氏は「(多くの問題があり)新スポンサー探しが困難ではないとは言えない」と既存地域でのマーケティングが難しいことを認めた。

 汚職事件に揺れたFIFAだったが、新天地での立て直しは水面下で大きく動いていた。英語、フランス語に続くFIFAの“公用語”に中国語が加えられる日は遠くないかもしれない。

【了】

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