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失格ではない遠藤航。ハリルの“選択ミス”が示した世界で戦えるスタイル

text by 編集部 photo by Getty Images

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遠藤航【写真:Getty Images】

【日本 2-0 カンボジア 2018年ロシアW杯アジア2次予選】

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の下での2015年の最終戦、カンボジアとのアウェイ戦は勝ち点3を獲得したものの、2-0というスコアに終わった。

 試合後には指揮官が「何人かの選手にはかなり怒っている」と不満をあらわにしたが、その要因は「まったく満足していない」と語った前半にある。前半の戦いを振り返ると、予想通り日本がボールを保持する展開。しかし、中盤からのゲームメイクは機能せず、引いて守りを固める相手を崩す手段を欠いていた。

 その最大の要因は遠藤航と山口蛍のセントラルMFコンビにあるだろう。この2人はどちらかといえば守備に特徴を持ち、攻撃面では縦への展開を得意とする“剛”のスタイル。

 特に「サイドチェンジや横の揺さぶりをイメージしていたけど、サイドにも中にも人がいた。自分はフリーだけど、どうつけるのかに難しさはあった」と語る遠藤航は同じ姓の遠藤保仁ではなく、先発を外れた長谷部誠の“後継者”となれる逸材である。

 しかし、遠藤に代わって柏木陽介が入った後半からは一転して得点機が生まれた。柏木は先発した2人とは真逆といえる展開力に優れた選手。左足から繰り出されるパスはカンボジアのDFラインの裏へ次々と通り、日本の攻撃を活性化させた。

 この状況には指揮官も「後半は少しバランスが整い、我々のプレーがより豊富になった。ボールが早くサイドにも背後にも行くようになった」と眉をひそめた。

 とはいえ、この結果で一概に遠藤に失格の烙印を押すことはできない。ハリルホジッチ監督が試合後に「補完関係のない選手を使ったのは私の責任だ」と語ったように、カンボジアのような相手に遠藤のようなスタイルを持つ選手の起用は意味をなさない。かつては遠藤保仁、現在では柏木のような“柔”のスタイルこそ最適といえる。

 一方でこの“柔”のスタイルはアジアの引いて守る相手には大きな効果を持つが、一転して世界の強国との対戦では力を封じられてしまう。遠藤保仁もザッケローニ監督の下で常に先発を担ってきたが、W杯本大会ではその座を譲った。

 日本や韓国といったアジアの上位国は予選では強者として主に引いた相手との対戦を強いられる。ところが世界の舞台に出れば、その立場は真逆。守備に重きを置かなければならなくなる。そして、遠藤航のような選手こそアジアではない世界の舞台で戦う際に不可欠な存在となるだろう。

 2チーム分のチーム作りが求められるという欧州や南米のチームにはない難しさを抱えている日本にとって、ベストメンバーは必ず1つの組み合わせである必要はない。相手に応じてベストメンバーを組み替えるという柔軟性が日本には求められている。

 今回のハリルホジッチ監督の“選択ミス”は、日本サッカー界に根付く積年の課題の解決のヒントが隠されていうのかもしれない。

【了】

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