相手も完敗を認める鹿島の強さ
積み重ねてきた経験と湧き上がる勝利への渇望が、ひとつひとつのプレーに表れていた。
「流れが変わっていく中でどういうプレーをしたら効果的か、相手が嫌がるかというのをやるのが自分の仕事」。そう話したのは、小笠原満男だ。言葉にするのは簡単だが、実践するのは難しいその“仕事”を完遂したことが、6度目のナビスコカップ制覇を手繰り寄せた。
先制点はCKから生まれた。キッカーの小笠原が精度の高いボールを送ると、フリーで走り込んだファン・ソッコが頭で決めてネットを揺らす。G大阪にとっては痛恨のミスだろう。ターゲットの一人であるファンを自由にし、悠々と走らせてしまった。昨季の3冠王者が集中を切らさなければ、このゴールは生まれなかったかもしれない。
だが、相手に生まれたほんのわずかな隙も見逃さない鹿島らしさが発揮されたともいえる。最終的に3ゴールを奪い、完勝という形で聖杯を掲げることになった。
「めっちゃ強かった」と倉田秋が言えば、黄金世代の盟友である遠藤保仁も「負けるべくして負けた」とこの結果を受け入れた。G大阪の選手は言い訳にはしなかったが、疲労もあっただろう。だが、そうした要素を差し引いても真紅のイレブンの闘志はG大阪を上回っていた。どちらがより勝ちたい気持ちを前面に押し出して戦ったかは明白だった。
【次ページ】前半から圧倒もゴールは奪えず。しかし、焦りはない