小笠原満男【写真:ダン・オロウィッツ】
【鹿島アントラーズ 3-0 ガンバ大阪 ヤマザキナビスコカップ決勝】
「まだまだ僕らも負けていられない」。ナビスコカップ決勝でチームを牽引し、MVPを受賞した鹿島アントラーズの小笠原満男は台頭する若手にすんなり道を譲る気はみじんもないことを明言した。
長くチームの中心にいる小笠原も今年36歳になった。チームメートだった中田浩二らをはじめ同期が次々と引退しているが、運動量豊富に走り回り、切れ味鋭いパスを何本も出す姿は年齢を感じさせないものだった。
何よりすさまじかったのは勝利への執念だ。90分間味方を鼓舞し続け、ガンバに隙を与えないばかりか、勝利がほぼ確定した時間帯でもピッチ内で指示を出し圧倒した。
「36歳には36歳なりの良さがある。こういう舞台で、勝ってきたことばかりがフォーカスされるが、決勝で負けたことも何回もある。そういう中でどうしたら勝てるのかが一番自分が力になれるところ。勝利にこだわるのがこのチーム。全員でファイトする。それができればいいサッカーができる」
物静かな男は試合後、報道陣を前に言葉を選ぶように丁寧に語ったが、その1つひとつに勝利への飽くなき執着心を感じさせる。
石井正忠監督は試合前の秘話を明かす。「ミーティングで(小笠原)満男が『ここで勝つと負けるのとでは本当に違う』と言った」。勝負の酸いも甘いも知る小笠原の言葉にチーム全員が奮い立ったに違いない。
この日の試合には19歳の鈴木優磨や23歳の柴崎岳など一回り以上若い選手も出場していた。言葉で表し、行動で示した小笠原の姿は彼らの中で蓄積されていく。常勝軍団のDNAはこうして受け継がれていく。
【了】