厳戒態勢だったカーディフ対スウォンジー
去る11月3日、プレミアリーグのローカル・ダービー史に新たな1ページが刻まれた。カーディフがホームでスウォンジーを下した(1-0)、南ウェールズ・ダービーだ。プレミアでは、「1年生」対「3年生」という新顔同士だが、100年以上の歴史を持つ対抗意識の激しさは、他のプレミア定番ダービーにも引けを取らない。
事実、試合当日の警備は最高レベル。敵地に乗り込む2万人超のスウォンジー・サポーターは、クラブ手配のバスを利用しなければ会場入りが許されなかった。チケット受け渡しも、警察に先導された計47台のバス内でのみ行われ、到着後はホーム陣営との完全隔離体制が敷かれた。
前回の対決は2部リーグ時代の2011年2月だが、厳重警戒の必要性は、その3カ月後にも論じられた。最終的にはスウォンジーがプレミア昇格を果たした、プレーオフ決勝で対戦する可能性があったのだ。
カーディフの準決勝敗退でその必要性は消滅したが、当時はイングランドのトップリーグの1枠を、ウェールズの2強が争う事態の妥当性も論じられた。国内では、セルティックとレンジャーズという、スコットランドの両巨頭が望んだリーグ間の「亡命」を、プレミア20クラブの会長たちが満場一致で否決した出来事も記憶に新しい。
イングランドから見たウェールズとスコットランドは、国際社会では英国内の母国勢だが、サッカーの世界では、共に独立した「外国勢」に当たる。
だが、カーディフやスウォンジーのようなウェールズ勢は、母国リーグ脱出を計ったスコットランドの2クラブに対し、クラブ創立当初からイングランドのリーグに所属している点で根本的に違っている。
ウェールズFA(協会)は、イングランドとスコットランドに次ぐ世界3番手の古株だが、全国規模のリーグ運営に着手したのは1992-93シーズンのこと。ウェールズ最古のレクサムを皮切りに、「地続きの隣国」の本格的なリーグに参戦するウェールズ勢が現れたのは、当然の成り行きだった。