チェルシーが陥った危機。クラブはモウリーニョ監督支援の声明
これはもう立派な「危機」である。下馬評では、戦力が昨季からほぼ横ばいでもプレミアリーグ連覇が濃厚と見られていたチェルシーだったが、開幕8戦で8ポイントしか獲得できず、目標はトップ4へと大幅に下方修正された。指揮を執るあのジョゼ・モウリーニョでさえ、今季4敗目を喫した8節サウサンプトン戦(1-3)後には、TVインタビューで7分間強の“SOS”を発信せざるを得ない状態だった。
お門違いと言われても仕方のないFAから罰金制裁が下った審判非難は、「10点満点でマイナス1点」と自軍を酷評した7節ニューカッスル戦(2-2)後などとは違い、尻を叩くことも憚られるほどチームが自信をなくしているという認識があってのことだろう。
「解任されない限り逃げはしない」、「自分こそがチェルシー史上最高の監督」といった発言は、監督交代を不振脱出の常套手段としてきた経営陣に対するサポート要求に他ならない。
効果はあった。8節翌々日にクラブ公式サイトに掲載された「モウリーニョ完全支援」の声明は、13年目を迎えているロマン・アブラモビッチ政権下では初の対外的な監督支援だ。即座に就任可能なめぼしい後任候補がいないという事情があったにしても、クラブを牛耳るオーナーの意思があればこその公式声明であることに違いはない。
この異例の措置は、クラブ全体の責任による危機というフロントの認識が背景にあるとも考えられる。明らかな主力のコンディション不足に、多分に商業的な昨季末のアジア経由オーストラリア遠征、結果としての例年より遅いプレシーズン開始が影響していないはずはない。
いずれも昨季プレミア王者への「褒美」という位置付けだが、選手の側には首位独走に近いリーグ優勝後の油断もあったようだ。リーグ戦でまだ1得点のジエゴ・コスタなどは、オーバーウェイトでの今季始動を認めている。加えて、オーナーの意向を汲んだ攻撃強化の一環として、ラインの位置が押し上げられ、両SBが揃って攻め上がる頻度も増えたとなれば、攻めては決め手を欠き、守っては後方のスペースをつかれる事態があり得なかったわけではない。