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日本代表を蝕む積年の課題と停滞。世界と戦うために必要な改革と「中長期計画」

text by 編集部 photo by Getty Images

日本代表 岡崎 本田 香川 ハリル
試合を終えた日本代表は一様に反省点を挙げた【写真:Getty Images】

 日本代表は13日、イラン代表とアウェイで対戦して1-1で引き分けた。10年ぶりの対戦はアジアの厳しさを改めて実感させられる貴重な機会となっている。

 試合を終えた選手たちは一様に反省点を挙げた。岡崎慎司は「前半の相手が元気な時に自分たちがいかに相手を制するかというか、守っていても虎視眈々とゴールを狙えるような、そういうバリエーションが必要」と述べたが、他の選手も軒並み同じようなポイントに触れた。

 これは先週のシリア戦後にも出ていた課題と全く変わっていない。もちろん今回の2試合という短期間で解決できる問題ではないが、イラン戦は特に前半のゲームマネジメントに苦心した。

 本田圭佑も「結局若干スペースができ、相手が落ちてから、何かをちょっとクリエイトできるような回数が増えたっていう、全くシリアと同じ課題が残りましたね」とチームのプレーに不満を示す。

 当然ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「全くゲームをコントロールできず、相手がフィジカルでわれわれを支配してきた」と前半のパフォーマンスに満足していない。

 フィジカルで圧倒されたという点に関しては香川真司も再三にわたって言及した。前半だけでピッチを去った10番は相手の厳しいマークと運動量に苦しめられてほぼノーインパクトだった試合を次のように振り返る。

「フィジカルの強い相手に対してどうやって攻撃を組み立てていくのかはすごく課題が残りました」

 しかし、世界と戦うことを標準として考える日本がイランのフィジカルに苦労していてよいのだろうか。彼らは後半の立ち上がりから明らかにパフォーマンスが低下し、一部の選手を除いて徐々に覇気を失っていった。

 確かに筋骨隆々で身体のぶつかり合いや競り合いには強さを見せていたが、香川や岡崎、本田たちが普段ヨーロッパで戦っている選手たちはもっと優れた能力を備えているはず。「フィジカル」という言葉が多義的な用語とはいえ、アジアのレベルでフィジカルを言い訳にしていたら世界とは戦えない。

 この現状を憂慮する本田は自分自身の力不足を実感したと述べつつ、一つの解決策を提示した。

「普段からそういうことを意識して、このレベルでコンスタントに、アウェイで完璧とまではいかないまでも、一定のパフォーマンスができるように、それぞれの選手がなるべき」

「一番いいのは、こういう環境に自分自身で身を置くことで慣れていく。これが本当にスタンダードに、選手それぞれの感覚がなっていくのが大事だと思いますね。だから最低でももっと若い選手は海外に出ていくべきです」

 イラン代表の攻撃の中心だった21番のアシュカン・デヤガーはかつてヴォルフスブルクで長谷部誠とともに主力として活躍し、プレミアリーグでプレーした実績がある。前線のサルダル・アズムンは弱冠20歳ながらロシア1部で継続して結果を残している。そういった選手たちと渡り合うには日常的にヨーロッパトップレベルでプレーする経験が必要という考えだ。一方でJリーグを軽視しているわけではない。

「誤解してもらったら困りますけど、Jリーグも本当に力をつけてきてるし、Jリーグがさらに力をつけていかないといけないし、その両方を並行して、若い選手はどんどん出る努力をしながらJリーグはJリーグでレベルを上げていく努力をしていくことじゃないかなと思います」

 日本はここ20数年で急激に力をつけてきたと思われがちだが、同じように周りの国々も成長を遂げているし、日本以上のスピードで追いつけ追い越せとばかりに迫ってくる。本田曰く「上げてくればくるほど経済と一緒で伸びにくくなる」のは当たり前のことだ。

 そこをいかにして打破するのか。「伸び率が下がりつつも、ちゃんとちょっとずつ伸びていくという中長期計画は日本のサッカー界全体に確かに求められている」と本田は提言する。

 アジアで勝つことが当たり前でなくなった今、選手たちが挙げたフィジカルやゴールを狙う上での課題の克服は困難を極める。だがそこでこれまでと同じことをしていては何も変わらない。今回の中東遠征は、アジアを制し世界と戦うために強化のアプローチを決定的に変えるべきという方向性が示された重要な2試合だったと理解しなければならないだろう。

【了】

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