イラン女子代表【写真:Getty Images】
今月初め、イラン女子代表の中に男性が混じってプレーしていたという告発に近い報道が発信された。8人の選手が性転換手術なしに女子代表として試合に出場していたことがあり、その後性転換したというショッキングな報道は果たして真実なのか。11日、現地で記者に聞いた。
答えてくれたのは「CUP」というイランの総合スポーツウェブサイトで記者を務めるナビド・オスタード・ラヒミ氏。こちらの「あの報道は真実なのか?」という率直な質問に「違います。それはあり得ません」と真っ向から否定。
「試合の時には性別チェックは行っており、そのようなことはありません」と語る。ではなぜそのような報道が出たのか。ラヒミ氏曰く、あのニュースはアラビア語圏が発端だという。イランはペルシャ語圏で違う文化圏にある。
「アラブとはスポーツだけでなく様々な面で関係が良くありません。こちらと喧嘩のような状態になると、噂を“作られて”邪魔されます。したがってまったくの嘘です」
先日、メッカへ巡礼中のイスラム教徒が将棋倒しになり、多数の死者を出した事件があった。サウジアラビアで起こった痛ましい事件にイランのイスラム関係者は強く抗議、両国の関係性は悪化しているという。テヘラン市内の地下鉄構内では大きな意見広告を設置され、あの事件の死者を悼むとともに巡礼中の環境への疑問を投げかけている。
そのような状況もあり、イランの女子サッカーが標的になった。同国のチームはイスラム教の戒律に従い、頭から首をスカーフで覆い(ヒジャブ)、長袖シャツや長ズボンでプレー。体の露出が極端に少ないことから、男性が混じっていても分からないだろうという憶測がきっかけになってしまったという。
9月に行われた第1回AFC女子フットサル選手権ではイランが日本を破り優勝したばかり。イランはイスラム圏では異例の躍進を続けている。
「イランは現在、女子も男子並みに育成しようと力を入れています。今後も女子が活躍するたびにそのような根も葉もない噂が流されるかもしれません」。こうラヒミ氏が語るように、アラブからのやっかみが再び起こってしまうかもしれない。
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