指揮官が感じていたジレンマ
アウェイの会場ではJ1リーグにもひけを取らない観客を集め、多くのクラブにとってのクラブ史上最多動員数を更新させるなど、一年を通じて注目を集め続けたG大阪。
日本代表の主力2人だけでなく、夏場に加わった宇佐美貴史ら攻撃陣に多彩なタレントを擁した大阪の雄は、常に追われる立場として初のJ2リーグを戦い、見事に一年での昇格を勝ち取った。
他を圧倒する戦力を擁し、昇格が義務づけられるチームを率いた指揮官は、熊本戦の翌日、安易に見せようとはしなかった胸の内をほんの少しだけ明かした。
「あんまり実感がない。まだ感慨に浸る感じではないが、昇格が決まって良かった」
長谷川健太監督にとっても初めてとなるJ2での昇格に、達成感というよりも、むしろ安堵の思いを感じていた。
過去にも浦和や、FC東京、柏が一年でのJ1復帰を為し遂げているものの、過去2年間を充電期間に充てていた長谷川監督に課せられたのは一年での昇格のみならず、攻撃サッカーの継承と言ういわば「二足の草鞋」でもあった。
熊本戦を終えた段階で、奪った得点数は2位の神戸を20上回る93点。降格の憂き目を見たとはいえ、昨年もJ1で最多得点を叩き出した攻撃力は健在だったが、指揮官は当初ジレンマを感じていたという。
「J2仕様って何だろうってずっと思っていた。『パスをつなぐサッカーじゃ、まだJ2を分かってないよな』なんてシーズン最初に言われた」(長谷川監督)
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