【後編はこちらから】 | 【サッカー批評issue53】掲載
2011シーズン、柏の大躍進を生み出した立役者の1人にFWの田中順也がいる。筆者は田中のプレーを見て、「とても考えてプレーしているな」と思っていた。「考えて」とは「どうやって動けば効果的なのか」を戦術という枠の中で常に考えているということだ。そこで筆者は、「チーム戦術」「グループ戦術」「個人戦術」に関して彼に取材した。FWとしての田中順也の戦術眼をじっくりと聞くことにしよう。
田中が下がった位置取りをする
――今回のインタビューのテーマは「FWとしての戦術論」です。柏のシステムは4-4-2ですよね。北嶋秀朗選手や工藤壮人選手のどちらかと田中選手が2トップを組む。試合を見ていると、田中選手は、ボランチのところまで下がってボールをもらいに行ったりとか、スペースを作ったりとか、逆にスペースに入っていたりする。
「基本的に守備の際は(攻撃から守備の切り替えの場面)、4-2-[3]-1になって、[3]の真ん中に入ります(図1)。そのときに相手のボランチのどちらかを潰すのが僕の役割なんです。それは監督からの指示です。攻撃にスイッチしたときは(守備から攻撃の切り替えの場面)、4-4-2になってフラットの2トップになります」
[図1]2011柏の基本フォーメーション
基本的に4-4-2だが、守備時には田中が下がり、4-2-3-1となる。
――守備の際に田中選手はボランチの位置まで下がる。そこで誰かがボールを奪って田中選手に預けたときには、自分たちのゴールに背中を向けた状態に田中選手がいる。そのときに背後からスペースを見つけるのは難しくない?
「ボールを奪った瞬間ですかね。守備をするために僕が下がるじゃないですか。誰かがボールを奪ったときは、僕にいったん預けられて、僕が近くの選手にボールを戻します。その選手はすぐにレアンドロ(・ドミンゲス)にボールを入れるんです。僕はボールを戻した瞬間に前を向きます。そうしたら視界には、相手のCBとうちのFW1人が見えるんです。前をパッと見たときに、もう1人のFWが右に行ったら逆に僕は左に行こうとします」