途中出場から2ゴール。才能を存分に放った浅野
時が止まったかのようなチップキックでのループシュート。日本のリオデジャネイロ五輪出場へカギとなる存在の一人、広島の若きストライカー浅野拓磨がゴールを奪う才能という選ばれた者が持つ光を、存分に輝き放つ時が来たと予感させた。
J1セカンドステージ第12節、清水エスパルス対サンフレッチェ広島。残留に執念を見せる清水がチョン・テセの2試合連続となる豪快なヘディングゴールで2-1と1点差に迫ると、サイドから猛攻を繰り返した。広島の左サイド、柏のスペースで自由を許した時間帯は、王国の灯を絶やさないと食い掛かるオレンジの勢いが紫を飲み込む寸前でもあった。
しかし、この日も佐藤寿人に代わって登場した浅野拓磨は後半35分、GK林卓人からの一本のロングパスに、清水のセンターバック平岡と、広島・森保監督が試合後「スピードだけでなく駆け引き、(ボディ)コンタクト」で成長を見せた駆け引きに競り勝つと、GKをこの日大胆なカウンターから先制を奪っていたドウグラスと同じような交わし方で置き去り、無人のゴールに追加点をねじ込んだ。
171cmながら体重はベストが70kg前後。浅野も「サイズだけはダニエウ・アウベスと一緒です」とオフに屈託なく話していた浅野だがなんのその、ボディコンタクトの強さも見せて今シーズン、リーグでは途中出場での7ゴール目となった。勝ち点3へあきらめない清水が重ねた猛攻からのまさかの、追加点を許した日本平のスタジアム。
再び静寂に包みこんだのは、後半35分だった。ドウグラスのパスに、トラップでディフェンスラインからのゼロスタートで一気に振り切ると、GKとの1対1を、今度は冷静にチップキック。紫の歓喜と、オレンジの静寂をBGMに、ボールは小さな弧を描いてゴール中央に吸い込まれた。