日々の練習で解禁となった“ある行為”
トニーニョ・セレーゾ前監督の電撃解任と石井正忠コーチの新監督就任。7月21日を境にアントラーズに生じた変化は、チーム史上2人目の日本人監督のもとで綺麗に並べられた6個の白星だけではない。
FC東京戦以降の6試合すべてに先発している選手は、GK曽ヶ端準、DF昌子源、DF山本脩斗の3人しかいない。対照的に3試合でわずか1勝と出遅れ、体制刷新をフロントに決断させたセカンドステージの序盤戦は8人もの選手が先発として固定されていた。
これが何を意味するのか。突き詰めていくと、日々の練習で“ある行為”が解禁されたことに行き着く。ディフェンスリーダーの昌子が振り返る。
「セレーゾ監督は球際に関してかなりシビアで、スライディングタックルをするとすぐに笛を鳴らしてプレーが止められました。石井監督になってからは、変な話ですけどOKというか、普通にスライディングタックルをしています。そうすると紅白戦が公式戦に近い雰囲気になり、実際に試合で相手に球際で負けないプレーが戻ってきたんじゃないかと思っています」
FC東京を3対0で一蹴して、2試合合計スコア5対2で準決勝進出を決めた6日のナビスコカップ準々決勝の第2レグ。勝因はアントラーズの選手たちがほとんどを制した、球際での競り合いだった。
試合後の公式会見で球際における強さを問われた石井監督は、こんな言葉を残している。
「練習で常に求めていることなので、日頃の積み重ねが出たと思っています」
セレーゾ監督がスライディングタックルを禁じていた理由は、いまとなっては定かではない。石井監督も昌子も「けがを恐れていたのでは」と推察するが、特に今シーズンのファーストステージにおいては、スライディングタックルに対して過去2シーズンよりもさらに神経質になっていたという。