露呈した『戦術と人選のズレ』
34本もシュートを打って3ゴールはやはり物足りない。試合の形は引き分けたシンガポール戦とまったく同じ。カンボジアはシンガポールより弱く、攻撃する意志もなかった。完全なワンサイドゲームで、引きこもっている相手からいかに得点するかのトレーニングのようなゲームである。
不思議なのは、ハリルホジッチ監督の作戦と選手起用のズレだ。
日本は立ち上がりからハイクロスをカンボジアのゴール前へ打ち込み、その後も執拗にハイクロスを上げている。監督の指示に違いない。ザッケローニ監督時代には、ハーフナー・マイクを起用した試合でさえハイクロスを多用しなかった日本が、今回はそうではなかった。監督の指示が徹底していたからだろう。
ファーサイドのゴールエリア角、そこへのハイクロスを何度も狙っていたが、多くは跳ね返された。シュートしても枠に飛んでいない。
「クロスボールを何本も上げたが合わせるところが足りなかった。今日気がついたのは、しっかり合わせられなかったこと。ゾーンストラテジー(ゴール前の位置どり)など、伸ばしていきたい」(ハリルホジッチ監督)
あそこまで引かれると崩しきるのは簡単ではない。高さとパワーでハイクロスをねじ込めれば、それが一番シンプルな点の取り方になる。間違ったアプローチではない。しかし、それならなぜこのメンバーなのか。なぜハイクロスに強い豊田陽平やハーフナーのようなFWを招集しなかったのか。
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