攻撃と守備が噛み合ってしまったシンガポール戦
結果が出ないというのは周囲の風当たりを強くするだけでなく、当事者たちの言動にも影響してしまうものだ。例えばメンバー発表におけるハリルホジッチ監督のペナルティに関する発言はゴールを奪うために日本人選手に不足していると指揮官が考えるうちの一部でしかないだろう。
それでも、公共の場で新しいキーワードとして出すことで大きく取り上げ、それがカンボジア戦での最も重要なカギの様に書かれてしまう。メディアというのはポジティブであれネガティブであれ、常に新しい何かを探してはセンセーショナルに取り上げることで話題性を作る性質を持っている。
もちろん、日本人のアタッカーがディフェンスに対して強引に抜け出すのか、かわすのか、うまく倒れるのかといった個人戦術の部分はもっと突き詰めていく必要がある。2002年W杯を率いたトルシエ監督が「真夜中の赤信号」と表現していた様なルールや秩序を頑に守ろうとする性質がスポーツでの勝負弱さに影響している部分もあるかもしれない。
しかし、そうした課題を考える前に、シンガポール戦で得点を取れなかった大きな要因は他のところにあることを認識してカンボジア戦に活かす必要がある。ハリルホジッチ監督はこの試合に関して「19回のチャンスがあった」と語っていた。その中にはシュートを正確に打てていればゴールになったものもあれば、ポストを直撃したものもあった。
その1つでも決めていればというのは確かにあるが、改めてチャンスやシュートの場面を見直すとディフェンスを外せている場面が非常に少ないことに気付く。相手が引いている時間が長く、攻めるスペースがあまり無いのだから、アタッキングサードでフリーの状態を作り出すのはそう簡単ではない。
しかし、振り返って分析してみると、日本の攻撃ペースとシンガポールの守るペースがほとんど同じになっていた。つまり、攻撃と守備が噛み合ってしまっていたのだ。