「彼にとっては、2部よりも1部のほうが簡単なんだ」
打ちのめされた。鳥肌が立つような感覚が圧倒する。5年前のことだ。父親のハンスと一緒にユリアン・バイグルは、観客席でジグナル・イドゥナ・パルクを体感した。8万の情熱が渦を巻いている。
その頃は、5年後にボルシア・ドルトムントの一員となり、開幕戦でブンデスリーガのデビューを飾り、ボルシアMGを4-0で一蹴する立役者となることなど、夢にも見なかった。
超新星、現る。2015年8月26日付の『シュポルトビルト』誌は、「スーパー坊や」という見出しでバイグルを取り上げた。今夏、2部の1860ミュンヘンから加入したU-20ドイツ代表は、15/16シーズンの開幕戦で先発の座を掴み、90分間フル出場する。
的確なポジショニングと正確なパスで、中盤の底でドルトムントの戦いを支えた。『キッカー』電子版のデータによれば、ボルシアMG戦におけるバイグルのパス成功率は94%となった。出場した全選手の中で最も高い数値だ。
1860ミュンヘンで、バイグルをU-23から発掘した当時に監督を務めたフリートヘルム・フンケルは、バイグルのパスについて「常軌を逸した正確性」と言い表している。そしてフンケルは「控えめで向学心に溢れる」バイグルのことを、“鶏群の一鶴”と見ていた。
「私はユリアン(・バイグル)がドルトムントのゲームをさらに特徴付けると確信している。彼にとっては、2部よりも1部のほうが簡単なんだ。より優れた選手とプレー出来るからね」
2部の舞台は、バイグルの才能を持て余している。少なくともフンケルの目にはそのように映った。しかしバイグルにその自覚はなかった。ドルトムントに渡る直前のシーズンの出来を「まあまあ」と捉えて、まだブンデスリーガに対する自信はなかったのだ。