日本にはスタジアムに集う人たちを「ファン」「サポーター」と呼び分けることがある。
「サポーターはクラブを応援している人という認識だと思いますが、一方で、ファンは基本的には選手一個人を応援する人。クラブではなくて私はあの選手のファンです、という人を指すのだと思います。
日本には選手が移籍するとそのまま追っかけていく人もいます。もちろん、これはネガティブな発想ではなくて、そういうファンの方がスタジアムへ足を運んでいただくことが動員を上げる意味でも大切ですし、サッカー文化を醸成するにはまず大切なことだと思います。
ただ、ドイツのサッカーを見ながら思うことは、今後日本サッカーは多くの「ファン」が「サポーター」へシフトしていくことが一つのポイントになるのではないかと思っているんです」
瀬田さんはフォルトナのフロントに勤務する。試合前にはピッチレベルに降りて、スタンド側の横断幕を見上げることになる。
「そこで見て気づくことはドイツには選手の名前を書いている横断幕がないということ。それはファンとサポーターの違いに通ずる話だと思うのですが、例えば、○○選手の横断幕が上がっているとその○○選手のモチベーションが上がります。
けれど、極論をいえば、その一枚の横断幕は、ほかの選手たちにはモチベーションアップにはなりません。単純にいえば、選手全員のモチベーションをあげるには全選手の横断幕がないといけないことになります。
ドイツの現場には、もちろんこれはJリーグにもありますが、○○サポーターズクラブ、○○市応援団、などという横断幕がほとんどです。フォルトナのホームタウンであるデュッセルドルフの街の隣にはラーティンゲン、その逆側にはノイスという街があります。
スタンドの横断幕には、ノイス、ラーティンゲン、と書いてフォルトナのマークがついているようなものがあります。彼らは何が言いたいのかというと、ラーティンゲン、ノイスの人間がここにいますよ、ということ。彼らはスタンド側からアピールしている。そうすると選手たちも、今日もラーティンゲンから、ノイスから応援が来ている、という認識になる。
アウェーなどでもその一枚の横断幕があれば選手たちは、また応援に来てくれている、というふうに気づくことができます。
日本でも「ファン」がより多くの「サポーター」へ移行するためにも、横断幕で自分たちの存在を選手たちやクラブにしっかりとアピールする。そんな流れができてくると面白いのではないかと思います」
【了】
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