「現状維持はマイナス」を合言葉に
「たとえばリハビリ中でも『あっ、トヨくん、ボールを蹴れるようになったんだ』とか、あるいは『さすがにシュートがうまいな』とか、豊川のそういった姿を周りの選手が見るだけで、彼がもっている前向きなエネルギーがチームを助けていく。起承転結でしっかりとまとまった話だけが、見ている人に伝わるわけではないと示してくれるというか、背中でメッセージを伝えられる選手だと思っている」
指揮官の口ぶりからは、尖った形で進化を続ける京都を、相手ゴール前での決定的な仕事とメンタル面での両方でさらなる高みへ導くラストピースとして、豊川の復帰を待ち焦がれていたのがわかる。
天皇杯の準決勝は10月27日に行われ、京都は鹿島とヴィッセル神戸の勝者と対戦する。ベンチ外で、かつ準決勝とは思っていなかった2年前は経験していない未知の戦いへ。その先の11月23日に国立競技場で待つ決勝も含めて、豊川自身もはっきりと輪郭を帯びてきたタイトルをしっかりと見すえている。
「これからも自分のプレーに磨きをかけて、自分ができるプレーでチームに貢献していきたい。若い選手も多いので自信もつくと思うし、そこからプレーの質ももっとあがってくると思うので楽しみですけど、いまここで甘さが出ると一気に落ちていく。その意味でも、練習からもう一回引き締めてやっていきたい」
リーグ戦が後半戦に入った6月最終週以降で、天皇杯を加えた公式戦の成績が10勝2分け1敗。J1残留とタイトル獲得へ向けて一気に右肩上がりに転じた京都は、誰もが復帰を待っていた豊川が加わり、曺監督が唱える「現状維持はマイナス」を合言葉にしながら、最後まで成長の二文字を追い求めていく。
(取材・文:藤江直人)