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世界一のGKとはどんな選手のことを言うのだろうか。これまでも数々の名選手たちにその称号が与えられてきた。そして今、ジャンルイジ・ドンナルンマをその地位に推す声も多い。13歳の若さでビッグクラブからの争奪戦を巻き起こしたこの巨人は、批判と重圧を乗り越え、パリの地でその称号を手にすることができるだろうか。(文:佐藤徳和)
PSGをCLベスト8に導いたジャンルイジ・ドンナルンマ

【写真:Getty Images】
デジレ・ドゥエが放った一撃がネットを揺らした刹那、パリ・サンジェルマン(PSG)の何人もの選手やスタッフが、ひざまずき、天を指さす“巨人”のもとへ駆け寄った。その男は、イタリア代表GKジャンルイジ・ドンナルンマ。
3月13日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)・ベスト16の運命を懸けたリヴァプールとの一戦。ドンナルンマは、2度の決定機を防ぐと、PK戦では、ダルウィン・ヌニェスとカーティス・ジョーンズのシュートを止め、PSGに準々決勝への切符をもたらした。
今季のプレミアリーグで、首位を独走するイングランドの雄に敵地で勝ち星を得ることは難しいと思われていた。だが、この試合で“レッズ”の前に立ちはだかったのが、1stレグの戦犯扱いとされていたドンナルンマだった。
2月25日に26歳の誕生日を迎えたドンナルンマは、ナポリ近郊の風光明媚な町、カステッランマーレ・ディ・スタービアの生まれだ。余談であるが、現在のイタリア代表(3月のドイツ代表戦招集メンバー)では、唯一南部出身のプレーヤーだ。サルデーニャ出身のニコロ・バレッラとドンナルンマ、アルゼンチン生まれのマテオ・レテオを除き、全員がローマ以北の生まれである。
幼少期から、その抜きん出た体格を誇り、ゴールを決めることよりも防ぐことを好んでいた。8歳のときに、9歳上の兄、アントニオや、ナポリの暗黒時代を支えたジェンナーロ・イエッツォ、パルマやボローニャで正GKを務めたアントニオ・ミランテも育て上げたエルネスト・フェッラーロGKコーチのお眼鏡にかなう。2018年に77歳で他界した名伯楽は、ジャンルイジを初めて見たときに「世界で最も優れたGKになることができる」と確信した。